uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットのなかだった(ただし出ることはできません) 運命という世界線を壊せ 828

 どうやら勇者が黄金の鬼の角を切ったらしい。その強大なエネルギーの反応が消えていく……いく? いや、なんか違うね。

 

「どういうとこ?」

 

 私は久しぶり、いやほんとうに久方ぶりに自身で立った間隔を味わいながら、目のまえの存在にそう伝える。私は変な空間にいる。黄金の鬼とこの世界を覆ってるブヨブヨとの繋がりを私は断ち切った。それによって、世界の力を無理やり引き出せなくなった鬼をうまく勇者とアラクネちゃんは倒してくれたらしい。それはなんとなくわかる。

 私はいま謎空間に、着の身着のままにいる。実際裸である。まあけど、なんか私の体は光ってて、裸はみえない。これは多分だけど、ここは現実ではないんじゃないんだろうか? 多分だけど、私は意識に干渉をうけてる……と見た方がいい。

 

(でもそんなこと……)

 

 できるもの? だって私はG-01に守られてる。なにせ私はG-01の頭であって動力みたいなものだ。いや、実際G-01には 頭も動力もあるから私は実際は『鍵』だったのかもしれない。G-01を起動するためのキー。それが私という存在? 

 まあ私自身のことはまだいい。わかってることも、わかることも少ないのだ。そもそもなんか制限がかかってるからね。変な使命を負わせられてるってことだけが分かってる。G-01という枷にはめられて、この世界……という世界を飲み込もうとしてる空獣とかいう化け物を倒すために私とG-01はいる――みたいな。

 一応それにはあらがったりしてない。いくら世界を渡れる力をG-01がもってるとしても、すべての世界を空獣が飲み込んでしまえば、いつかは絶対に対峙することになってしまう。そして……だ。一度空獣と邂逅した私は知ってる。あの存在がどれだけおかしいのか。バグってるのかってことをね。

 だからG-01を強化するのは何も異論はない。それをやっていかないと、次にもしも空獣に対峙したときに、もう一度逃げられるとは限らない。倒すにしても、実際まだまだそのビジョンとか見えないし。

 

「カラカラだね」

 

 私はそんなことをいう。この空間には私だけいる訳じゃない。目の前にいる。それは蛇……ではない。いうなればドラゴン? いや、龍と言った方が正しいかもしれない。そんなのがいる。大きな体、屈強な体格、そして大きな翼がある――というようなドラゴンではなく、蛇のような細長い体。そして長いひげをもって、何やら神秘的といっていい姿をしてる。そもそもがなんか白いし。もっと生物的な存在かと思ってた龍だが、なんかまさに神の眷属という見た目してるというか? 

 そんな龍がこの空間で横たわってる。その体は実際かなり長いのか、どこを見回しても、龍の体は途切れることなく見える。そしてもっとわかりやすいのが、どうやらこの龍、弱ってる。かなりしわしわである。

 この龍の正体を私はなんとなく感じてる。それは……世界の明を支えてるブヨブヨだ。あれがきっとこいつだ。だってエネルギーの質が一緒なんだ。今、私はG-01の中にいないが……なんか分析とかできる。不思議な感覚だった。いや、もしかしたら……

 

(意識の中でも私とG-01のつながりは切れないってことなのかな?)

転生したらロボットのなかだった(ただし出ることはできません) 運命という世界線を壊せ 827

 地上で待ち構えてるかと思った黄金の鬼だが、なんと砂を蹴ってこっちに来る。こっちも空気を蹴って、鬼にまっすぐに向かってたからびっくりだ。鬼はあの巨体にしてはとても速い。だが捉えられない速さじゃない。

 なので向かってきた拳をギリギリで避けた。でも鬼の拳がアホみたいなスピードだったから、鬼のパンチで空気が乱れてて自分の体がめっちゃグルグルと回る。けどそれでも狙いは一つ!!

 鬼の顔と交差するその瞬間。聖剣を素早く振り抜く。その瞬間――

 

ガキイイイイイイン!!

 

 ――と弾かれた。けど角を見ると、何かが漏れ出てた。それに鬼も「ガア!?」と一瞬吠えた。それはきっと痛みだ。あいつは腕を落とされても、そんなに痛みなんて感じてなかったみたいな感じだった。けどやっぱりだけど、角は鬼の弱点なんだろう。

 ここを攻撃されたらやばいとわかってる。でも大抵はあの角を切るなんてことができる存在はそうそう居ないだろう。あれだけの高密度のエネルギーが集まってる物体を叩き切る……それは元の体の時には絶対にできなかった。けど……今なら……

 

「まだまだあ!!」

 

 更に自分は魔法で足場を作ってそれを蹴った。そして鬼に追いすがり、更に斬りつける。けどそれを鬼は顔を背けることで避けた。でもこれは――

 

(避けたってことは、聖剣を驚異に感じてるってことだ!)

 

――そういうことだろう。でも逃しはしない。急旋回して、追いすがる。けど次はその顔を向けてきた。そしてその口を大きく開ける。

 

(誘われた!?)

 

 逃げるふりをしたのかもしれない。自分が角を狙ってるのはわかってたんだろう。だからこそ、一回逃げたふりをして自分が追いかけて来るところをパクっとする気。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

 自分は止まらなかった。本当ならここで一回止まって避けるだろう。鬼だってそう思ってたはずだ。けど自分は鬼の口に突っ込んだ。そして口の中で聖剣を突き刺して、次の瞬間、鬼の首のところから背後に出た。そしてそこから頭上にいく。完璧なポジションだ。

 

(次こそ行けます!)

 

 そう言ってくる聖剣。でもそんなの言われなくても確信めいてた。何故か切れるってわかった。自分は聖剣を振り抜く。鬼はとっさに両腕をクロスしてかばった。でもそんなのさえ意味なかった。腕は一瞬、角は抵抗を感じた。けど、それでもかかった時間は刹那の最中だ。鬼の角を切った聖剣の力は、この世界にも爪痕を残すような一撃だった。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 826

「腕の一本二本なんて、鬼にとっては大したことなんてない……か」

 

 引きぢぎった鬼の腕と共に空へと投げられた自分は眼下の様子を見ながらそうつぶやいた。眼下では片腕を失った筈の黄金の鬼のその傷口にエネルギーが集まっていって、それが鬼の腕をあっという間に形成する。本当にそれは五秒くらいで済んでた。あれだと下手に怪我をしたところを直したりするよりも、もう一気にちぎって大きく回復させたほうが、効率がいいんではないか? と思うくらいである。

 それにどうやら、腕を直すくらいでは鬼のエネルギー的には微々たる減少しかしてない。奴の四肢をもぎ取って、回復にエネルギーを回させて消耗させる……というのは非効率だということが分かった。

 実際自分の狙いは黄金の鬼の角だ。それは変わらない。けど、あの角にエネルギーが集まってるからこそ、回復とか攻撃とかそういう行動一つ一つに費やすことで、角に集ってるエネルギーを消費させ続けていけば……その内エネルギーが少なくなって切りやすくなる……という希望、いやこの場合は願望というほうが正しいかもしれない。それがあった。

 

「都合のいいことは考えるのはやめたほうがいいな」

(その通りです。それに、今の私たちなら次は確実に斬れます!!)

 

 自分の言葉に聖剣がそう答えてくれる。それはとても心強い言葉だ。なにせ腕を一本丸々はやしたというのに、鬼のエネルギーはほとんど変化なんてしてない。あれだけの大きさなのに、それを再生するのにほぼエネルギーを消費しないなんて詐欺ではないだろうか? 

 普通は肉体を再生するなんてなかなかの魔力を消費するような高度な魔法だった筈だ。自分の元居た世界ではそれこそ欠損を再生させることができる程の魔法使いはそれこそ一握りって感じだった。

 それにそれほどの再生は一日に一回が限界……とかだった。でもどうやら鬼はそうじゃない。確かに人間と鬼では圧倒的にエネルギーが違う。人間の頃の勇者としての自分でも鬼のそれこそ一割もエネルギーを持ってないだろう。

 そして勇者である自分は前の世界ではトップクラスに魔力が多かった。その自分でそれなのだ。つまりは鬼は減ったとはいえ、そのエネルギーの多さは規格外だ。だからその規格外のエネルギーで再生してるから、ほぼ影響なんて出てないってことなんだとおもう。

 

「もっと大雑把にエネルギーを使えばいいものを……いや、使ってアレなのか」

 

 大きなエネルギーを持ってる奴はその大きなエネルギーに頼り切ったような使い方をする。それはつまりはどでかい高威力の攻撃をやってしまうって感じだ。

 なにせ阿保みたいにただエネルギーを放つだけで大抵は倒せるだろう。倒せてしまう。なので小技なんて必要なんてない。エネルギーを制限するなんてのは小技なのだ。茲許ない奴がするずる賢い策だ。その証拠に黄金の鬼はそれこそ世界からエネルギーの供給を受けてるときはバカスカと極大砲撃を撃ってた。

 今はそうじゃないが、それはただ普段の戦い方に戻っただけだろう。黄金の鬼としては小細工してるつもりはない。でもそれはどうやら攻撃に関してだけ……なのかもしれない。

 なにせ腕を再生させたのにはそれほどエネルギーを消費してない。けどそれはもしかしたら攻撃には際限なく攻撃を込めることができるから……なのかもしれない。

 けど再生するエネルギー……それに必要なエネルギーは大体は決まってるだろう。いっぱい注げば直りが早くなる……というのはあるだろう。でもそれも多分鬼はやってる。だからこそ、あれだけ一瞬で自身の腕を再生したのだ。

 つまりはあいつにとって回復なんてのはいくらエネルギーを注ごうとしても、大した負担にもなりえない行為……ということだ。つまりは長くやっててもいいことなんてのは――ない。

 

「行くぞ、次で確実に決める!」

(はい!)

 

 宣言、それは覚悟だ。それをもって、思いを強く籠めることができる。そして聖剣は心に応えくれる剣だ。

ある日、超能力に目覚めた件 189P

(わかったよ……やってみる。確かにずっと一人で隠し切るってのは辛いしな)

 

 アースが言った提案に乗ってみる事にした野々野足軽桶狭間忠国が正直どういう反応をするのか……それはよくわからない。もしかしたら……

 

(化け物扱いされるかもな)

(それで何か困りますか? むしろ好都合じゃないですか。化け物を敵に回したいと思う人間はいません。生存本能があるのですから。強者と分かれば媚び諂うのが生物というものでしょう)

(……)

 

 何だか野々野足軽の内心に黒いドロドロとしたものが湧き上がる気がしてた。アースは純粋な言葉としてそれを言ってるというか思ってるんだろう。ただずっと見てきた中で、生物とはそういうものだ。強者が弱者を支配するのが、世界の構造なのだと……そしてそれがきっと歴史が証明してるからこそ、それにアースは違和感なんてない。

 確かにこの世界は本質的にはその通りなんだろう。いくら文明が発達して、そして民主主義だと声高に唱えていても……実際は世界は強い奴と弱い奴に分かれてるのかも知れない。

 けど強者というのは一体? と思う野々野足軽だ。なにせ強い弱いとは腕力なのか? と疑問に思う。

 

(それで、その方法は?)

 

 

※※※

 桶狭間忠国は冷たい地面の感触を感じた。地面が桶狭間忠国の体温を奪ってる。そうやって地面に体温を奪われていると、ようやく桶狭間忠国は目を覚ます。

 

「はっ!?」

 

 桶狭間忠国にはウトウトなんて曖昧な意識の部分はなかった。いや実際あったが、それを彼、桶狭間忠国は許さない。自身で無理やり覚醒させて素早く状態を起こした。それはまさに常日頃から戦いに身を置いてる者の動作って感じだった。この平和な国で常に戦いに身を置くなんてどうやったらできるのか……それは全く分からないが、取り敢えず桶狭間忠国はすぐに覚醒してそして目の前に佇む人物に目を向ける。

 それは勿論、野々野足軽だ。彼はこの線路の下にあるトンネルの壁に寄りかかっていた。そこそこ明るく保たれてるはずのこのトンネル内で、意図的にだろう。

 野々野足軽の顔には影が陰ってる。そしてそんな野々野足軽のことを見て、とても不気味に桶狭間忠国が感じる。それは桶狭間忠国が今まで感じたことないプレッシャーだ。

 桶狭間忠国は鍛えた体、それに体に追いつくための技術をちゃんと習得してる。体の使い方をそれこそ達人レベルに極めてるといっていい。だからこそ、この巨体で音も出さずに歩行することができるし、どんな態勢でもその体を支えることだってできる。そこらのチンピラにだって半グレにだって、それこそ本職の方々、それにちゃんと技術を習得して免許皆伝とかになってる武道の師範代とかにだって桶狭間忠国は負ける気なんてしない。

 そしてそれは驕りでもなんでもない。恵まれた体格とそして抜群の運動センス、それに一番はやはり桶狭間忠国の異常性が、まだまだ十六歳という年齢でそこまでの極みに到達させた。本来ならそれこそもっともっと時間をかけて半生位をかけておかしくない鍛錬が必要な程に桶狭間忠国は強い。

 そんな桶狭間忠国だからこそ、これまで喧嘩やら戦いやら、肉体的な勝負で負けたことなんてない。だからこそ、恐怖なんてものには縁がない。なにせすべてはその力で解決できたからだ。

 けど……

 

(なんだ……これ? こいつは……なんだ?)

 

 野々野足軽はただ壁に寄りかかって顔を下に向けてるだけだ。なにか声を発したり、変な笑いをしてるわけでもない。桶狭間忠国は他人の強さがなんとなくわかる。その体を見たらどのくらい鍛えてるのかもわかるのだ。体の動きでどんな技術を習得してるのか、それそこ体を動かすのが得意なのか苦手なのか――そんなことまでわかる。

 そしてそれによると、野々野足軽は普通の奴――というのがこれまでの桶狭間忠国の印象だった。そう……これまでは――

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 825

 聖剣が集ったエネルギーに応えるかのようにその姿を変えていく。今までも豪華で格好良かったが気品もあった聖剣である。それが更に変わるらしい。輝きが増してて、実際今はその姿をよくみることは叶わない。

 でもその光が今一度、治っていく。でもそれはエネルギーを消費してるわけじゃない。凝縮されたエネルギーがどうやら聖剣へと固定化されてるみたいな? そんな感じだ。

 

「これは……」

 

 光が収まる前に一回大きく黄金の鬼の腕を弾いた。それによって、大きく体勢を崩した黄金の鬼。本来ならそれはとても大きな隙だ。大きく腕が上に上がって、その大きな体が晒されてる。本来ならここで一気に距離を詰めて、真っ二つにしたいくらいだ。でもそれよりも自分は聖剣の変化を優先した。

 実態があった聖剣が、どんどんシンプルになっていく。その姿が透明になっていくような……そして軽さも今までより、よりないかのようになっていった。でも自分にはその存在は確かに感じれるからどうやら問題なんてないみたいだ。そして刀身から始まって、柄まで透明になった。その姿はよく見ればちゃんと見える。刃渡りは一メートル以上はあるだろう。今までは長剣のような感じの聖剣だったが、今は片刃になってる。まるで氷でできた剣のように少し表面は凸凹してるのか、見る角度によって色々な反射をしてる。そしてさらにそれだけじゃない。柄の部分からは光の帯のようなものが二本伸びてた。

 極限までシンプルにした刃……それがどうやら新しい聖剣の姿らしい。眩しかったのに、今や太陽が眩しいくらいになった。そして確かめるように自分は聖剣を握る。鬼は大きく仰け反らせてた体を戻す勢いを利用して、両手を重ねた。握り合わせて、その握った拳を自分に向けて勢いよく振り下ろしてくる。

 

(行けるか? いや、行けるよな)

 

 姿が変わった聖剣にそう問いかける。すると頭の中で聖剣が「もちろん」と言った。けどそれはまだ発揮されることはなかった。なぜなら、鬼の拳がこっちに届く前に自分達の間に蜘蛛の巣が張り巡らされたからだ。それは弾力があって、わずかでも勢いを落としてくれる。でもそれでも完全に鬼の攻撃が止まったわけじゃない。蜘蛛の糸はブチブチとちぎれてる。

 後ろを見ると、G-01が寄越してきた砂獣の彼女が気付いてる。そして何やらうなづいてきた。彼女とは会話はできない。けど、何となくわかった。きっとこう言ってる。

 

「私のことはもう大丈夫です」

 

 −−ってね。だから自分は動き出す。勢いが落ちた拳に着地して、そこから鬼の顔を目指す。すると鬼が自分を掴もうと合わせてた拳を解いて、左手を向けてくる。自分は右腕の方を走ってた。とりあえずその手を避けて、次は左腕の方に渡る。鬼は振り払おうとその上体を振り回す。けどその程度!! このまま上手く走って顔に近づいて、鬼の角を切る!! 今度こそだ! そう思ってたけど、そう簡単にはいかないらしい。

 

「は?」

 

 思わずそんな言葉が口からでた。だって……まさか自分の走ってる腕を自らちぎるってやりすぎだろ。そしてそれを投げた。当然だけど、それと共に自分も上空へと飛ばされた。

ある日、超能力に目覚めた件 188P

(できる……のか?)

(やってやりましょう。丁度、新たな体が欲しかったところです)

 

 何だか脳内で物騒な会話をしてる野々野足軽とアース。そして側には地面に倒れたままの桶狭間忠国。一度はさっさとここから逃げようとしてた野々野足軽だが、アースの言葉に一応まだ止まってる。そしてこれである。

 

(新たな体って……乗っ取るきか? これを?)

 

 野々野足軽はアースのことを女性と勝手に認識してる。実際はその姿をはっきりと見たことないが、形を取った時には詳細はわからなかったが、印象的には野々野足軽的には女性だと思ったからだ。

 それに頭に響く声も高い。だからもしもアースが桶狭間忠国の中に入る? とか想像してしまったら……

 

(うえっ)

 

 −−と思ってしまう野々野足軽である。もしもこの図体で女性的な仕草になってしまったら、と思うと耐えられなそうにない野々野足軽だ。

 

(乗っ取るとは失礼ですね。それに、そんな事をしたらこの器では耐えられませんよ)

(それってやっぱり力が関係あるのか?)

(そうですね。私を受け入れてられるのは、力を感じて、貴方自体が自身を保護してるからです。そうじゃなかったら、今頃私と貴方は溶け合ってる事でしょう)

(こわっ!? そんなことになってたのかよ! なら最初に言えよ!!)

 

 思わずそんな抗議をしてしまう野々野足軽。でもしょうがないだろう。だってもしかしたら今頃自分−−という存在を無くしてしまってたかも知れない……そう言われると文句だって言いたくなる。

 なにせそんな危険な事−−という自覚が事態が野々野足軽にはなかったのだから。

 

(聞かれなかったので)

(お前な……)

 

 時々に野々野足軽も忘れかけるが、アースはそこらの存在ではない。地球の意思そのものだ。だからこそ、人間の感覚で接してたら理解できない面も多々ある。それはこれまで一緒に過ごしてきたから何とくなくは野々野足軽だってわかってる。わかってるが……その言い方にはちょっとムッとする。

 

(それじゃあ、桶狭間の事、どうする気なんだ?)

(いつまでも、それにずっと隠し続けるのも窮屈でしょう? だから、取り込んでしまうんですよ。私はこれまで長らく人間を観察し続けて知ってます)

(何を?)

(それは、人間とは欲望に忠実な生き物なんですよ)

 

 なんかアースがニヤニヤと悪い笑みをしてる……そんな感じが野々野足軽には伝わってきてた。

ある日、超能力に目覚めた件 187P

 桶狭間忠国が迫ってくる。膨らんだ腕には血管が浮き出てて、動き出したその圧力が野々野足軽を襲ってた。

 

(ころさ――)

(ダメです!!)

 

 野々野足軽は殺気を感じてた。それも明確な殺気だ。自分自身に向けられる明確な敵意さえただの男子高校生には珍しい物なのは言うまでもない。それが敵意よりもさらにうえの殺気となると、この国に活きてたら生涯晒されない人の方が多いだろう。

 

――ドサッ――

 

 と突然桶狭間忠国が倒れた。白目をむいて、口からは泡を吹いてた。

 

「はあはあ……」

 

 どっと野々野足軽は吹き出てる汗をぬぐう。別に野々野足軽は動いてなんてない。精々一歩二歩程度だ。それなのにまるでマラソンでも終えた直後みたいにひどい汗をかいてた。

 

「思わずだったんだ……」

 

 誰に言ってるのかわからないような言葉を野々野足軽はつぶやいた。何が起こったのか……野々野足軽は自分自身で理解してる。迫ってきた桶狭間忠国に対して、野々野足軽は思わず頭に……いや、より正確にいえば脳みそに声をぶつけたんだ。それによって無防備な脳はその衝撃にびっくりして停止した……つまりは脳震盪みたいなことが起きてるんじゃないかと野々野足軽は思ってる。

 

(やってしまいましたね)

(これ……言い訳できるよな?)

(それはどうでしょうか?)

(まだ一回だし……もしかしたら桶狭間がただ体調が悪かっただけって思ってくれるかもしれない。だってどうしようもなかっただろ? 痛いのは嫌だったし……)

 

 野々野足軽は実は何発かくらうっていう選択肢も頭に思い描いてはいた。だってここでボコボコにされてた方が、何の疑いもなく野々野足軽は自身を平々凡々な存在として印象付けることができただろう。

 桶狭間忠国は野々野足軽に何かあるのではないか? と疑っていた。ならそれを払拭するためにも何もしなくて、負ける……がバレない選択肢としては最善だった。その時は、桶狭間忠国は彼女−−「平賀式部」に相応しいのは自分だ−−と思ったかもしれないが、それをきっと平賀式部は受け入れる事はないだろうと確信めいてた。

 

(こいつの、殺気がやばかったんだ。殺されるって……本気で思った)

 

 筋骨隆々の体が向かってくる恐怖……それに野々野足軽は耐えられなかった。直前に筋肉のせいで服が弾けてたのを見てたのもあるだろう。あの筋肉で殴れらたら否応にも自分自身もあのようになるんでは? っていう想像が膨らんだのだろう。

 だからこそ、覚悟が一瞬で恐怖へと変わって、野々野足軽は力を使って桶狭間忠国を昏倒させてしまった。

 

(逃げるしかないよな……言い訳は後で考えよう)

(それよりも、もう上下関係をはっきりさせた方がいいのでは? そうしないといつまでもこの生き物は納得なんてしないと思いますが?)

 

 この場からさっさと逃走しようとしてた野々野足軽にアースがそんなことを言ってくる。