uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 67

 私の名前は『ネナン』だ。お父さんとお母さんがある花の名前をとってつけてくれた名前。お父さんは賞金稼ぎで、お母さんは洗濯の仕事をしてた。お父さんはそんなに稼ぎが良くなかったから、お母さんも働いていたんだけどそれでも二人は仲良しで、私にもとても優しかった。お父さんは本当に私にあまあまで、所謂親馬鹿って奴だったと思う。だっていつだって『ネナンは世界一可愛いな~』とか言ってた。
 そう言って私の顔にそのジャリジャリの頬を擦り付けてきた私はいつだって「いたいいたい~」って言ってたんだ。そんな光景をお母さんは優しく見てて、私はいつだってお母さんの所に逃げ込んでた。決して裕福ではなかった。でも……暖かかったんだ。私はお父さんが危険な仕事をしてるって知ってた。でもお父さんがいなくなる……なんて微塵もおもって無く……だってお父さんはとっても臆病だってお母さんが言ってたんだ。
 
 お父さんはいつも私に凄い活躍の話をしてくれる。だからそれが本当かどうかは実際分かってなかった。でもお母さんは私にお話を聞かせるお父さんを見て、いつだって『はいはい、貴方はそれを見てただけってオチでしょ?』って言ってた。そんなことを言われてお父さんはふてくされるんだけど、それは一時的な事。お母さんはその後に私にこう言ってねって言ってたのだ。
 
『お父さんは格好いいよね? 私信じてるよ!!』
 
 そう言うとお父さんは泣きそうな表情をして私を抱きしめてくれた。そして『お父さん頑張る!!』と言うのだ。私達は笑い合ってた。そうやって毎日を生きていんだ。あの日が来るまでは――
 
 
 その日は暑い日だった。いつも熱いけど、なんだかとても熱かった印象がある。いつものような日々。朝にはいつものようにお仕事に行くお父さんを送り出してた。それから家のお手伝いをしてた。友達が来たから午前中にもいつものように遊んで、昼が近く成ってきたから、一度家にそれぞれ戻る。そんなタイミングだったと思う。空が行き成り暗くなって、何かが空から落ちて来た。
 
 私はそれを何か――としか認識してない。だって直後、世界は暗転したからだ。何かが頭に当たった様な気がした。そのまま意識はなくなって……次に目を開けたとき、片側が真っ暗で、見える方にも霞が掛かってた。でもその声ははっきりと聞こえて……
 
『ネナン!! 大丈夫か!?』
『貴方、ネナンが目を開けたわ!! ネナンは生きてる!! 早くここから離れましょう!!』
『ああ、ここは危険すぎ――ぐぁ!? 二人とも伏せろ!!」
『ネナン!!』
 
 一瞬、激しい風が吹いたと思った。次の瞬間、お母さんとお父さんが私に覆い被さってきた。それから地震や暴風、轟音が続く。私はその間も動けなくて、でもなんか大地は動いてるかのようで、よく分からない感覚に身を任せるしか無かった。そして不意に太陽が眩しく見えた時、そこにはお父さんとお母さんはいなくて、お父さんとお母さんだった……そんな物だけがあった。その日から、私はひとりぼっちに成って、全てを無くしてしまった。
 私は行き成り全てをなくした。そんな私が生きていけてるのは、偉い人達のおかげらしい。でも……それがなんだと言うのだ。私は何度もこんな世界に意味ないって思った。最初はいつお母さんとお父さんが戻って来てくれるのかって周囲の大人に聞いていた。けど……決まって皆困った顔をするんだ。そして何日目を伏せてそして開けてもお母さんとお父さんが戻ってくることはなかった。
 
 そんな時、皆が街を救ったっていう巨大な人がやってきた。私は一目見たとき、それが悍ましい物だって思った。そして皆がこいつを英雄だというけど、きっとこいつが私のお父さんとお母さんを奪ったんだって思った。それからはお腹の中がぐつぐつとしてきて……そして私は何度も石を投げた。でもあいつは反応しない。私なんて見えてないかのようだった。それがまたイライラして、私は毎日石を投げた。それがきっといけなかったんだろう。でもこれでいいとも思った。
 だってこれでやっと私はいける。お父さんとお母さんの所へと。
 
 私は大きな悪魔の腕に包まれて、どこかに連れられていた。でも分かってる。だってこいつは悪魔なのだ。私のお父さんとお母さんを奪った悪魔。だからきっと私も奪ってくれるだろう。私はそれが望みだった。もう一度お父さんとお母さんに会いたい。そればかり考えてた。でも子供が死ぬなんて難しいのだ。高いところから落ちれば良いんだろうけど、私達がいるような所に高い建物なんて無い。なら外に……砂獣と呼ばれる化け物に食べて貰えば……と思っても、大人も子供達も皆が私を警戒してた。ならもうこの悪魔をけしかけるしかなかった。
 
「ようやく……ようやく会えるよ」
 
 そんなことを悪魔の腕の中で呟いた。その時、両手で私を包んでた巨大な悪魔がその手を開く。すると眩しい光と凄い風に私は目を閉じた。近くに感じる熱気と眩しさを片手で遮って私はたった一つ残った目を開く。すると次の瞬間、私の目にはみたことない光景が広がっていた。雲よりも高い場所……どこまでも見渡せる景色。遠くの遠くまで、見える。あの町から出たことなかった私は見渡せる世界の広さに圧倒される。
 
「あっ……なっ……ひっ!?」
 
 私はなんとなく下を見た。すると悪魔の指の隙間から小さくな小さく、それこそ砂の一粒になったかのような街が見えた。信じられない……こんな、こんな事って……そして下を見たら次は上だった。
 
「あっ、お父さんとお母さん!!」
 
 私はとても大きく見える太陽に手を伸ばした。だって皆が言っていた。死んだ人達はあの空の太陽へと帰るんだって。だからきっとあそこにお父さんとお母さんがいるんだ。私の手に応える様に、太陽がグニャン揺らいだように見えた。きっとお父さんとお母さんが迎えに来てくれたんだ!! そう思った。
 
「あ!? ああぁぁあああああ!!」
 
 でも次の瞬間、眼帯の奥に鋭く痛みが走った。それは無くなったはずの目だけじゃない。更に置く……頭にまで響いてる。私のそんな様子にビックリしたのか、巨大な悪魔が太陽に向かって攻撃した。何やらうるさい音が何回も響いてた。
 
「やめ……やめてええええ!!」
 
 私は痛みでフラフラする中、その指にすがりついた。フラフラしてたからか、眼帯がズレて風で飛んでいく。私は両目を見開いた。そしてその目がお父さんとお母さんを見た。
 
「お父さんとお母さん!!」
 
 私必死にふたりを呼ぶ。私も来たんだよって……そう叫ぶ。けど……二人は頭を横に振るう。そして指さしたのは世界の光景だった。
 
「どういう事? 分からないよ!!」
 
 二人は私に手を振ってる。私にはそれに振り返すなんて出来ない。だって一緒に連れて行って欲しいからだ。でも二人は私の手を取ってはくれない。次第に太陽その者が遠くに行くように下がっている様に見える。そしてそれに呼応してお父さんとお母さんも消え行く。二人は泣いていた。言葉は聞こえない。でも私の目は消え行く二人の口の動きを捉えてた。二人は揃えて同じ事を言っている。
 
『愛してる、これからもずっと』
 
 そんな言葉が私にはちゃんと伝わった。私は涙で何も見えなく成った。視界が暗くなる。温かたった……寧ろ熱かったのに、なんだか一気に寒くなった気がする。けどそんなことはどうでも良かった。ただ私はとても疲れて。その大きな指に寄りかかる様に瞼を閉じた。