「ごめんねネナン」
「ごめん。一緒に居てあげられなくて……」
どうやらネナンちゃんの両親はいやいや言ってるネナンちゃんに、もうそのまま聞かせようとしてるらしい。実際それが良いね。私が実はさっきから秒数を感づかれない程度に止めては進めるという事を繰り返してたが、それも流石に不自然に思われてはまずい。
ここからは私は一切不正をしないことを誓おう。
「ネナン、こんなことになって……貴方の側にいてあげられなくて、ごめんなさい」
「守ってあげられなくて、寂しくさせてごめんよ」
「酷いお願いかもしれない、これは親の身勝手なのかも……それでも……ね」
「ああ、それでもこれは最後のお願いだ。私達の世界で一番愛してるネナンへの、願いだ」
そう言ってちょっと離れてネナンちゃんの顔を見ようとする両親。けどネナンちゃんはそれをどう感じたのか、はたまた本能なのか、拒絶するようにより強く抱きつくよ。
「いや! そんな事言わないで!! はなさないよ! お母さんも!! お父さんも!! どこにもいかないで!!」
そんな言葉に、二人は沈痛な表情をするよ。お母さんはやっぱり涙が落ちる。お父さんは上を向いてその涙をこらえてた。そしてこれは男の……いや父親の役目と思ったんだろう。お父さんから口火を切る。
「私たちはずっとそばにいる。ずっとネナンを見守ってる。こうやってもう一度会えたんだ。それはつまりは、実はずっと傍にいたんだ。ただネナンが気づかなかっただけで」
「それじゃあ、さびじいよ……」
確かに……と思う私は最低だろうか? いやネナンちゃんは子供だし、それじゃあ満足できないよねって話である。
「ごめんね。私たちはもう見えなくなる。けど、それでもネナンの傍にはいるから。だから、精一杯生きてほしい。強く……強く、強かに生きてほしい。誰になんと言われようと、私たちはネナンの味方だから」
「ええ、誰も私達のネナンの悪口なんて言わせないわ」
「強く……なんてなれないよ! 一人は寂しいもん!!」
それも確かに……とか思う私はやっぱり最低か? いや話の腰を折りたいわけじゃない。私は第三者の目線としてね……
「ネナンは今、幸せじゃないの?」
「楽しいし、暮らしやすい……けど幸せ……かはわかんない……よ。だってお父さんもお母さんもいないもん」
時々夜になるとふと、泣いてるネナンちゃんの事を知ってる。それはそうだよね。親と死に別れた子供が悲しくないわけはない。今が楽しくても……いや楽しいから、もしかしたら満たされてるからこそ……ふと両親のことを思い出したら泣いてしまうんだろう。まあこの世界、宵になると強制的に生命体は眠るからそういう悩みとか少なそうではある。
だって強制睡眠は強制熟睡でもある。夢は見ないのだ。強制的にHPを完全回復にして復活させる仕様がこの世界だからね。
「これからは私達もいると思いなさい。そして、楽しくて暮らしやすいのなら、幸せでいいんだよ。ネナンがそう思って過ごしてくれる事を私達も願ってるんだから」
「ええ、そのとおりよ」
「本当に? お父さんもお母さんも……私が幸せだと幸せ?」
「ええ」
「ああ、いつだってそういってただろ?」
「うん……うん!!」
何かを噛みしめるように、ネナンちゃんは噛み締めてる。もしかしたら生前から今の言葉は両親が言ってたのかもしれない。すると、二人の体がわずかに光りだす。私の素晴らしい演出だ。
「お別れ……なの?」
「ごめんね。ううん、ありがとう。私達の子供に生まれてくれて」
「愛してるよネナン」
「愛してる」
「「ずっと」」
二人が光の粒子になっていく。キラキラとした光の粒子へと……そんな二人にネナンちゃんが涙ながらに言葉を紡ぐ。精一杯……届くように、大きな声で。
「私も! 二人が大好きだよ!! 大好きだよ!!」
そんな言葉を光が消えてもネナンちゃんはずっと言っていた。