「あの旦那……俺達は……ここで分かれるのは不味いのでは?」
「ああ〰」
なんとか俺がローワイヤさんについて行ける様になったと思ったらこっちの奴らも不安がってたか。まあ問答無用で人々を化け物に変えるような連中で、それに罪悪感さえないような奴らである。それに砂獣を使役してて、それに人の死体を食べさせてる様な異常な連中……確かに不安になる気持ちはわかる。
皆がここまで耐えられたのは、俺という安心材料が居たからだろう。実際、賞金稼ぎの奴らだけでは、あの変質させられた化け物と対峙した時点で詰んでただろう。ジャル爺さんなら、あの程度の化け物に遅れを取ることはないだろうが、連れてきてないしね。
コイツラも自分達の力では不安があるんから、ここで別々に動くのは怖いんだろう。でも……こればかりは仕方ない。
「流石に全員を連れて行くことは……」
そういって一応ローワイヤさんの方を見る。すると当然に首を横に振られた。まあそうだよな。案外ピローネは許すかもしれないが、ペニーニャイアンとかいう人を俺はしらない。そいつが黒幕なら、そこまで許すとも負えない。
てかこんなよくわからない建物に住んでる上級国民みたいな奴だ。下級である俺達なんかみたくないって思ってそう。
「我慢してくれ。通信手段はわかってるだろ? 何か起きたらすぐに知らせるんだ」
「そうだよな。わかったよ勇者の旦那」
流石に賞金稼ぎの奴らも無茶を言ってるとわかってたらしく、どうやら言ってみただけみたいだ。まあ何かあれば、彼らにはそれぞれ魔法を刻んだ小石をもたせる。それを砕けば、こっちに信号が来るようになってる。ジゼロワン殿なら、それこそ通信できるアイテムを簡単に作り出したりするのだろうが、俺には流石にそこまでの力はない。というか、技術がない。
だから危険を知らせるアラームを送る程度の物がせいぜいだ。だが、それでもこの建物程度なら一秒もあれは、移動できるだろう。壁とか脆そうだしな。流石に何か仕掛けられても、全員が何も出来ずに殺される――ってことばないだろうと信じてる。
「さて、皆さんは勿論ローワイヤ様のお力に成ってくれたのですから、いいですが、その後ろのお人たちは?」
老齢の執事長が後方で縛られてる仮面の奴らに目を向ける。なんかめっちゃ縮こまってて、声を駆けられると肩を震わせていた。
仲間なんだろうに……異常な恐れ様。執事長も役者で、全く知らない感じをだしてる。けどあれって協会関係だとはわかるのでは? ちょっと不自然だぞ。俺達が外から来た奴らだって事で、甘く見てるのか? まあ別にいいんだけど。
「彼らは私を狙って来た刺客です。勇者様が捕まえてくださいました」
「なるほどなるほど、この中央も一枚岩ではないですからね。ですが、ここまでくればもう安全です。彼らはこちらでいいように料理しておきましょう」
ここで素直に渡したら、コイツラ開放されるのか? 普通ならここで素直に渡す……なんて事はしない。けど、なんかめっちゃ仮面の奴ら震えてるから、普通に渡してもいい気がする。失敗した奴らに慈悲を与えるような奴らでもないだろうしな。
それにここでペニーニャイアンを疑ってる……と思われたくはない。
「そうですね。私達の手には余ってたところです。ペニーニャイアン様なら上手く利用してくれますよね?」
「勿論でございます」
仮面でもわかる絶望の顔。これで太陽に逝くことが出来なくなったのかな? いい気味だ。
「あんなのどうでもいいでしょ。早く行きましょう」
「ええ、そうね。勇者様」
ピローネが急かしてローワイヤさんが俺を呼んでくれる。とりあえず皆とは別れて俺はローワイヤさんと共に、先に屋敷の中へと向かった。