「私を守れ! 死んでも守れえええええ!!」
ローブの中でそんなことを叫ぶ協会の偉い奴。いや偉いのかは知らんけど……でもあの中では一番偉い奴が迫る魔王にビビってめっちゃ叫んでる。
でもそれに応えるのは周囲にいたお仲間ではなくて、さっき暴行をしてた奴しかいないっていうね。周りに散れって命令された奴らは、魔王が自分達を狙ってないって知って逆に安心してる。
だからこそ誰も動こうとはしてないんだ。哀れなものだ。自分の人望の無さに嘆いて死んでけ……嫌流石に殺すのは不味い?
(でも何人もいるなら別にまぁ……)
あいつだけじゃないしな。
「無駄だ!」
唯一偉そうな協会の奴を守ろうとした軽く投げ飛ばす魔王。その仕草はあいつ的にはかなり優しかったといえる。多分魔王も彼を哀れだと思ったんだろう。だから前に立った彼はなるべく優しく排除して、そしてもちろん、その後ろで偉ぶってた奴には容赦なんて向けない。
「歯ぁ食いしばれ!!」
「まっ――まて! 取引を――」
なにか偉ぶってたやつが言ってたが、魔王はそんなのを最後まで聞くわけもなく、その拳を思いっきり叩き込んでた。その一撃で吹き飛んだそいつは協会の天井を突き破って空を進んでた。
でもどうやらバイタルを把握する限り、まだ生きてるみたいだ。凄い生命力……流石はこの世界の住人だ。
(って違うか)
なんであいつがまだ生きてるのか……その理由は実はわかってる。 あんな権力で生きてるようなやつが強いわけはなく、そして体だって鍛えてるわけもないはずだ。
でもだからってこの世界の住人特有の元来の体の強さってだけでも、魔王の攻撃に生きてることは説明できないと思う。
(まあ種明かしすればあいつの着てたローブが身代わりになったみたいだけどね)
確かにあのローブってこの世界基準でいうと魔法とか施されてるし、かなりの高性能な防具と捉えることができる。普通に日常的に砂獣を相手にしてる賞金稼ぎの連中だってそんな魔法の付与された様な防具なんて使ってない。
実際前線で戦ってるような連中にこそ必要だろうに、協会は自分たちだけで大事に大事に使ってるのだ。そのおかけで魔王の攻撃を耐え抜いたのは事実だけど……でもどうやら攻撃の衝撃を完璧に受け止めきれなかったのか、このままでは落ちたときにさすがに死ぬと思う。
気を失ってるようだしね。
「ちっ、こんなものか」
「ギャラパラ様!」
「助けるのか? このまま落とせば晴れて自由になれるんではないか?」
「そんなことを私は望んでない!」
そういって暴行を受けてたであろうそいつは偉そうにしてた協会のやつ……えっと「ギャラパラ」だっけを受け止めようとしてる。
「おまえたちはしないのか?」
周囲にまだいる協会のほかの連中にそう声をかける魔王。けど彼らは顔をそらすだけだ。
「そうだよな、あんな奴よりも、もっと俺様を楽しませろ」
そんな凶悪な魔王の提案に残されてた奴らは震え上がってた。どうやらもう争う気力はなくなったみたいだ。