なんか子供達が歩き去ったAIの事で盛り上がってる。そんな折、なんか宮殿の方から人がぞろぞろとやってきた。
「うわー面倒……」
まあ私は喋れない設定なので別に斯く斯く云々と伝える必要も無いんだけどね。勇者もその中にいるから、とりあえずある程度の事は勇者に伝えて、後は勇者に丸投げである。私はこっそりとAIの視点を覗くことにしよう。
あいつが本当にちゃんと魔王のところに行くかわかんないしね。いや、流石に行くとは思うけど。そこで何をやるのか……魔王が何をしてるのか……ちゃんとこの眼で確かめたい。勇者にも魔王にも、自由というか、人権的な物を考えて、あんまり監視できるような装置って使ってなかったんだよね。
そもそもが勇者や魔王を創造したときは最初も最初だったからね。色々と多機能にすることは基本的に出来なかったと思う。ほぼAIに任せての創造だったんだよね。なにせあのときは何が何だかわかってなかったしね。確か勇者と魔王の世界の力とかも使って作ったんだと思う。今はあのときよりも莫大なエネルギーが有ったし、それにそれを一つの体に集約したわけだから、AIの体は勇者と魔王よりも高性能になってる。
まあだからこそ、こういうことも出来るのだ。
『ジゼロワン殿、今度は一体何をしたんですか?』
『私がいつも面倒を引き起こしてる――みたいなにいうのは止めてください』
頭の中に勇者の声が届く。私は威厳を込めた口調で対応するよ。私は勇者や魔王と話すときは、威厳を気にしてるからね。なにせ実際には私はこの二人の上位の存在なのだ。あんまり子供っぽく話してもね……やっぱり私のこの姿的にちゃんと威厳があった方が良いかなってね。
『端的に言うと、新たな肉体を生み出しました。どうやら魔王に問題が起きたようなので、それの確認のためです』
『魔王に問題? あいつ、まさか貴方から離れようと?』
なかなかに鋭いね。やはり魔王のことは勇者がよくわかってる。私が最初に観たのは魔王と勇者の死闘だったしね。戦いを通じて色々とわかり合ってたのかもしれない。それからも私の眷属として、二人で切磋琢磨してたしね。
『私は貴方たちの主人ですが、その自主性は尊重しますよ。武器としての役割なら、今はどうにかなりますし、勇者もその気があるのなら言って良いですよ。まあ突然そんな申請が来たらちょっと寂しいですけど』
『つまりはいきなりその申請が来たと言うことですか。あいつは全く……ジゼロワン殿にどれだけ恩があるかわかってるのか? それに忠告をしておきますが、あいつを野放しにするのは危険だと思います』
まあ確かに? 私といるときはなかなかに大人しかったが、魔王は基本からして……いや根本からして魔王だ。魔王とは何か……それは破壊と混沌の存在みたいな物だ。つまりは危ない。私といるときに大人しかったのは、私が押さえつけてたからだ。いや、私にはそのつもりはなかったけど、でも結果的にはそうなってたんだと思う
しかも今の魔王はそれこそ一つの世界で収まってたときよりも強い。確かに下手に手放すと何をするのか……少々心配だね。あいつが問題を起こしたことが回り回って私の責任されても困るし……AIには私たちとは何の関係も無い――という書類とかにサインさせてって言っといた方が良いかもしれない。そういうの大事だもんね。