「貴様の力はそんな物か!!」
なんか魔王がどっかの戦闘民族みたいなことを……と思ったけど、よく考えたら魔王って戦闘民族だったよ。だから全然間違ってない。民族って程に沢山数がいるわけではない思うけど、まあ魔王は戦闘狂だよね。
だから相手にもそれ相応の強さを求める。つまらない戦いはやりたくない奴だからね。どうせ戦うのならば、血湧き肉躍る様な戦いをしたい……そんなことを魔王は思ってる。私は全然そんなこと思わないけどね。
なるべく圧勝して勝ちたい派だよ。だってそうじゃないと大変だし。幸いなことに、G-01は大変に優秀なので大抵の奴等には苦もなく勝てる。まあ今の魔王とやり合ってどうかと言われると……うーんだけどね。
勝てるとは思う。実際アイとの戦闘では魔王の今の上限を図ることは出来ない。体のパーツにはアイの方が良い物を使ってる筈なんだけどね。けどそれでも性能に出てこない面で魔王は最新スペックのアイを上回ってる。
いや一応ちょっと前に鬼共の力を得たときにバージョンアップしたからってのもある。こんな事になるのなら……って感じはあるけど、それは言っても仕方ないことだろう。魔王だって、旅立つ前にはこんなすぐに私から離れられるかもしれないなんて思ってなかったはずだし。
一体何があったのか……それを知りたいのに、さっさとアイが戦闘を始めたせいで良くわかんない。
魔王とアイの戦いは終始魔王が押している。けど、なにかアイは狙いがあるようだ。どう考えても、魔王の方が強いというのはわかってる。けど、それで戦いを止めないアイ。アイのようなAIならそこら辺は合理的な判断をしそうな物だ。けどその合理的な判断とやらで、まだどうにかなるって事なんだと思う。
今まではその人間的な体に沿った動きをしてたアイだけど、一気にそのたがを外したかのように、気持ち悪い動きをして魔王に攻撃を加えてる。今まで攻められてたぶん、なんとか主導権を握ろうとした結果なんだろう。
腕や足が変な方向に動くのは当たり前。でも首まで変な方向に回る必要なくない? めっちゃゾクッとするよ。アイはその体を常識外の動きで操って奇異をねらったんだろう。けど、魔王は流石に戦闘になれてる。
それに魔王だからね。人外との戦闘にも慣れてるんだろう。だからアイの奇異を狙った動きにも対応してる。でもこれがまだアイの『狙い』では無かったみたいだ。もっと避けづらい、避けられない様な攻撃を狙ってた。
伸びる手とか、伸びる胴体とか……そんなんでもちゃんと魔王は対応する。いや魔王の対応力よ……高すぎる。けど、それでもアイは諦め無い。目からビームもだすし、口から炎だって吐き出す。やり放題だ。でもそんな攻撃も涼しい顔で受け流した魔王は言う。
「それだけか?」
「いいえ、完了ですよ」
「なに?」
その瞬間、魔王が自身の体の変化に気づいた。膝が付き、体が震えてる。一体何を? アイは何をしたのか……
「ナノマイクロデバイスですよ。そういう知識は無いでしょう?」
「一体いつ……」
「気化させたそれらをゆっくりと放屁させて貰いました」
うん? 今なんていった? 今……放屁っていわなかった? つまりこいつ……戦闘中におならしてそこからそのナノマイクロデバイスって奴を放出してたのかよ! それは予想外すぎるよ。