大きな振動と、そして砂柱を立てて鬼は地面に倒れ込む。これでやった……なんてのは思わない。流石にそこまで鬼は弱くはない。確かに鬼のエネルギーは一気に小さくなった。だがそれは今までと比べてってだけであって、そもそもが鬼が内包してるエネルギーは強大だ。今の目を切り裂いて、そして口に聖剣を突き立てることでどれだけのエネルギーを消耗させられたか……といえば、はっきり言ってそんなでもなかった。だから油断なんてしない。
自分は次の一手のために鬼の口からはすでに脱出してる。なにせあのまま口の中にいたら、咀嚼されてただろう。だって倒れてすぐにその口を閉じようとしてきた。驚いて倒れたんだろうが、そもそもが鬼に痛覚なるものがあるのかもよくわからない。
本当なら口の中から体内に入ってそこで聖剣を振り回す−−ってのが一番良かっただろう。なにせ体内なら邪魔するものなんていないはず。多分。なのでさらに奥に最初は侵入する気だった。
けど……
「危険な気がしたんだよな」
口から食道を通って胃の方へと行こうとした。けど、なんか自分の中の第六感が危険を告げてた。実際口はあった。そして目にも有効打が与えられた。ならさらに……って思うだろう。なにせエネルギーが減ったと言っても、鬼の体はそもそもが頑丈だ。この聖剣を持ってしても、薄皮一枚切るのがやっとだ。けど内側ならそうでもない。比較的楽に切れる。それならもっと体内の重要な場所で……と思うだろう。
でもどうやら自分はその直感を信じて良かったと思う。砂からいきなり出てきた黄金の鬼は自分を捕まえようと、タックルしてくる。なんかなりふり構ってないような……そんなやり方。両手を開き、そして口も目も見開いてる。飛びかかるようにして自分へと迫ってきた黄金の鬼をかわす。すると無様に黄金の鬼は砂に倒れて滑っていく。ガラ空きの背中。そこに向かって聖剣を突き刺す。けどやはりだけど、通らない。いや、ちょっとだけ刺さる。
でも口の中を突き刺したようなザクッとした感覚はない。なんとか押し込んでようやくちょっとだけ切っ先が入るかどうか……
「やっぱり狙いは……」
そう思ってみるのはやつの頭。いや正確にはその頭にある角だ。なにせG-01殿も言ってた。鬼の弱点はその角だと。そして実際、その角にエネルギーが集約されてるのがわかる。鬼の活動を支えてるのは明らかにあの角だ。だからこそ中に入る意味ってないんでは? って思った。だってそもそもが鬼は食事なんて取らないだろう。なのに口がある……いや口があるのはまだいい。でもその奥、食道やさらには内臓っておかしい。いらない臓器まで作るか? とね。なので出てきた。結局、外で戦うのが正解だと思ったし、きっとそれはあってる。あのまま中に進んでたら、もしかしたら外に出られないようにされてたかもしれない。