「それで、中央が動き出したみたいです」
「そうですか。情報、ありがとうございます」
そういって王様が直々に勇者へと頭を下げる。本来なら勇者はラパンさんにだけいってとっと退場しようとしてたが、まあ当然だけどそんなのは許されるわけがない。
なんか勇者は自分の価値? というか重要度ってやつがちゃんとわかってない。勇者なのにそんなことある? と言いたいがじっさいそうなのだからきっとそういう性格なんだろう。他人は評価するけど、自分はそこまで高く評価しないというか……だからこそ、勇者なんて立場にあっても他人を尊敬したり、立てたりできたりするんだと思える。
だってもしも私が勇者なんて立場になって周囲から「勇者様、勇者様」とか言われたらきっと調子に乗ると思う。だって特別なんだよ? 周囲からもそういう風に見られたら、人間なら調子に乗る生物だろう。今だって本当なら私は調子に乗ったっておかしくない立場だ。なにせ圧倒的な強さが私にはある。その気になったら、この世界を蹂躙する……なんてことができてしまう。
それは調子に乗ってるって言える行動だろう。でもそんな風になってないのは、私は間接的にしか誰とも接してないから……だ。実際褒められたりしても、それってG-01の事じゃんってなる。G-01という壁が挟まるおかげであんまり調子に乗れないっていうね。確かに私がG-01を操作してるが、でもそれを知ってる人たちはほぼいないわけで、称賛はG-01に向けられてるものであって、私じゃないって思うんだよね。だから客観的にみられてるんだと思う。
けど勇者は違うからね。周囲が持ち上げてもあくまでま謙遜してて、誠実で、そして周囲への感謝を忘れてない。うん……まさに『勇者』の鏡のような存在ではないだろうか?
まあそういう訳で、そんな勇者はもちろんだけどラパンさんもそうだし、王様だって信頼厚い。勇者が無駄な情報を持ってくるなんて思ってない、勇者がきたらきっと重要な事だという認識があるんだろう。そして実際、勇者は重要な情報をもってきた。
「勇者様の考えでは教会は空に現れた扉を開くために都市核を狙っている……ということですね」
「ええ、扉にはシンボルがありました。それはそれぞれの都市に対応してるのではないかと思いまして。これです」
そういって勇者はドローンが印刷した写真を王様たちにみせる。最初はその写真にびっくりしてた彼らだが、今はそれはどうでもいいことだから、そこは強引にスルーした。
問題はあの扉に刻まれてたシンボルが本当に各都市のものなのか? だ。今は都合よく、ここには残ってる街のトップが集まってるなら自分たちの街のシンボルはわかってるだろう。
そしてそれでわかったのはやっぱりあの扉のシンボルはそれぞれの街を現してそう……という事だった。