「むむむ、あれは……」
ザンサンシャカレのドローンを通して私は周囲を見てうなってる。それはちょっとまずい状況だからだ。なんとかザンサンシャカレの皆さんを雨を降らせることでミイラにすることは防げた。まあそれでも流石にドローンの体積では食料を運ぶ……なんてのは難しい。まあ実際、ドローンを複数使って魔法を使って雨を降らせてるわけだ。水分を集めて……なんてことをやってるわけじゃなく、もっと単純に元からある水をドローンの魔法で移動させてるってわけだけどね。
だから実は魔法で食料を転移……もできなくもないかもしれないが、やっぱり人間には水の方が大切ではないだろうか? それに雨にしてるから皆さん勝手に口を開けるだけで飲めるけど……もしもドローンでドサドサドサと食料を落としたらどうなるか……汚い? 飢えてる人たちはそんなことは気にしないだろう。
きっと食料が見えたら群がってくる。そしてここにはもう統治者とかいないのだ。軍だってほぼアズバインバカラへと出払ってる。今、砂獣が襲ってきたらどうなるのか……きっと守れない。捨て身なんだよね。
一応最低限……本当に最低限の兵士はいる。けど、彼らで砂獣を抑えられるか? いや無理だ。さらに言うと食料に群がる市民を止めることだって出来ないだろう。寧ろ真っ先に彼らも群がりそう。
そうなると悲惨なことになるのは想像に難くない。なにせ追い詰められた人たちは何をするのかわかんないからだ。自分を守るため、大切な人を守るために、血肉を争う……なんてことになったら大変。
だから水を雨として降らせた判断は正しかったと思ってる。けど、それで命をつなげても、外部要因で簡単に命って奪われるんだよね。それがいつ現れるかわかんない災害といってもいい砂獣なら「なんてタイミングが悪いんだ」ってなる。
けど今、ここザンサンシャカレへと向かってきてる脅威は残念ながら砂獣ではない。いや、厳密には砂獣もいるけど、なんかダンゴムシみたいな砂獣の上にでっかい籠? を作ってそこに教会の連中がのってる。しかもそのダンゴムシ、かなりデカい。十メートルはある。そんなのが見えるだけで五体。上に乗ってる教会の変なローブの奴らは一体に20人くらいはいそう。つまりは全部詰め詰めだったとしたら100人? 救助に来た……訳はないだろう。このタイミングでさ。ならきっと奴らの狙いは都市核だ。
さて……どうする?