駅の構内に一人の坊主がいた。簡素な錫杖をもち、笠を被り顔を隠してる。修道僧が来てる黒い法被? を来て足には草履。そんな格好だ。彼の目の前には葉っぱでつくった皿があった。どうやらそこに寄付を集めてるらしい。
彼はただ立ってる。そして腹を鳴らしてる。けど微動だにはしてない。彼は朝から夕方までそこにいた。奇異の目で見る人々。偶に絡んでくる小さな子ども。そしてお年寄り達は物珍しげにも、親切に話しかけてくれた。
(良い街だ)
そんな事を坊主は思ってた。彼はお布施を手に取る。そしてあるき出した。シャラン、シャラン――と坊主が歩く度に錫杖が音を出してる。そしてそのまま、坊主は駅から出て、駅の外の風景を眺めた。人が多く、賑わう駅前。バスが時間帯なのかひっきりなしに動いてて、並ぶ人達も絶えない。タクシーも賑わってるようだ。数人で歩いてる制服の学生。疲れた顔したサラリーマン。家族や恋人の姿。まさに世界の縮図のような光景。
「うむ」
そんな風に坊主は頷いた。そして坊主は前掛け? というか斜めにかけてる布みたいなところに手を突っ込んだ。そして取り出した。それはスマホだ。しかも折りたたみ式だ。縦に……じゃない横にね。まずは折り畳んだ状態で確認してたが、見づらかったのか、パカッと開いてタブレットサイズにした。
そしてマップを表示してあるき出す。
「ビッグパーカー一つとポテトLにドリンクはコーラで」
そう言ってトレーを持って二階に上がる。坊主は某有名ハンバーガーショップに来てた。修行僧かと思ったら、なんともジャンクなものに手を出してる坊主である。そして狭い狭い階段を上がって二階に上がると、すぐに声をかけられた。
「猩々(しょうじょう)殿、こちらです」
そこには三人の男がいた。そこに近づいて空いてるテーブルトレーをおいて椅子をひいた。錫杖を立てかけて、腰を下ろす坊主。そしてコーラを一口口に含んで、一息ついたところを確認してから、男の一人がこういった。
「なにか感じましたか? 我々にはそういう方面の力……はありませんからね」
すると坊主は体を前に出して、皆を呼ぶ。それに呼応して大の男四人が顔を突き合わせた。なんとも暑苦しい光景である。そしてわざわざ小声になって、坊主はいう。
「とんでもない」
「とんでもないですか?」
「ああ、とんでもない何かがこの街を覆っているぞ」
「それは……また」
坊主の言葉に、残りの三人がゴクリとつばを飲んでた。