盲目の聖女様は、他の奴らがそんな場合じゃないと判断したのか、彼女は自身で魔法を使うようにしたようだ。彼女は錫杖をシャランと鳴らす。すると基本的な状態の魔方陣が現れるらしい。それに対して彼女はそこにその綺麗でつやつやの指を差し込む。もちろんだけど、かさむけなんて一つもない、白魚の様な手である。
そんな指で魔方陣の中央に差し込んで、何やらくるくる。そしてピースして分けてくるくる。それによってなんか二つの円が付け加えられてる。そしてそこにフーと優しい吐息を吹きかける。それによって一つが緑色へと変わった。そしてもう一つにまた別の指を突っ込んで、もう一度フーとする。すると今度は赤くなった。それらを混ぜ合わせて、再び錫杖へと戻してシャランともう一度ならす。すると大きな魔方陣が現れて、なんとまあ、この範囲を巻き込むような竜巻が巻きおこった。
「「「うあああああああああああああああああ!?」」」
そんな風に叫んでザンサンシャカレの兵士たちが空へと舞いあがっていく。でもそれは全然楽しそうじゃない。じっさい竜巻に巻き込まれるって空中でもみくちゃにされながら、一緒に舞い上がってる様々なものにすごい勢いでぶつかったりして人間なんてひき肉みたいになってしまう……って感じなのだ。まあ幸いなことに、この世界は大体八割が砂だからね。巻きあがってるのも砂くらいしかない。どうやら上手く魔法を設定してるのか、教会の奴らは巻き込まれてないし、ダンゴムシに設置されてる櫓にも影響はそんなにないみたいだ。
このままじゃこっち側だけが、あの竜巻に巻き込まれて、そして放り出されることになる。巻き込まれてるが砂しかないといっても、砂が服の中に入ってくるのとかめっちゃ気持ちわるいからね。
「それで済めばいいけど……」
そんなことを考えながら、私は竜巻に巻き込まれてない範囲で音声に耳を傾ける。するとなんかこんな声が聞こえてきた。
「おまえら行くぞおおお!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
あれ? なんかやる気に逆に満ち溢れてる。彼らは竜巻程度じゃ、四肢を引きちぎらる……とかないらしい。砂の気持ち悪さも……まあこの世界で育ったんだから、慣れてるよね。彼らは見据えてる、そう……ダンゴムシの上の敵を。