「その巫女というのはペニーニャイアンですね」
『はいそうです』
別に知られてるのは何も驚くことは出ない。なにせ勇者がペニーニャイアンの邸宅で暴れたらしいし、それから色々と起こったわけだからね。具体的には勇者が王様を連れ出すって大事件が起きたのだ。そのきっかけってペニーニャイアンだしね。
「羨ましい」
『はい?』
今なんと? 羨ましいって言った? 私が密かに驚いてると、ミレナパウスさんが語りだす。
「はい、なにせ今もペニーニャイアンはあなた達が監禁してるのでしょう?」
『いえ、ペニーニャイアンは重要な証人です。すでにアズバインバカラへと引き渡しましたよ?』
「あら」
手を口に当てて上品にそういったミレナパウスさん。そして片手だったそこにもう片方……つまりは両手で口を覆って「ふふふふ」と可愛らしく笑ってる。お上品な見た目の女の子が、お上品に笑う……なんかとてもいいなって思った。
『なにがおかしいんですか?』
「いえ、あの子はせっかく教会から開放されたのに、また間違った選択をしてるのでちょっと……本当に哀れな子です」
『哀れ……ですか』
「ええ、そうでしょう。彼女は教会から逃げられて、更にはあなた達に確保までされてたのです。交渉次第ではそちらに寝返ることも出来たでしょう」
『それは……そうですね。てもペニーニャイアンは教会が気に入ってたようですよ? 貴方は違うのですか? 巫女という立場よりも聖女の方が上なのでは?』
「教会の皆さんは頭がおかしいんですよ? 知ってますか?」
『それは良く』
なんか驚いた。だって教会の光だろうこの聖女と呼ばれるミレナパウスさんがそんな事を言うとは。実際巫女という立場のペニーニャイアンだって教会で言うところの光寄りではあったはずだ。でもあいつは教会の常識……中央の奴らの常識に染まってた。
けどそれは仕方ないだろう。だって多分幼少期からそういう風に育てられたはずだ。周囲の環境がペニーニャイアンという人物の人格を形成したんだ。そこに不思議はない。
だってアレが中央では普通で、更にゆるく甘々でもあいつは許されてきた。だからアレほどのわがままな性格になったんだろうしね。でも……それは彼女、ミレナパウスさんだって同じでは無いのか?
でも彼女は教会が頭おかしいとハッキリ言った。いや、私も教会の連中は頭おかしいと思ってるけどね。それには全面同意でしか無い。けどその胸中に居るはずのミレナパウスさんがハッキリとそう言いきったことに驚いた。
だってそれって他の常識がないと言えないだろう。一体どうして……彼女はその考えに至ったのだろうか?