「それであれのこと、何か知ってるか?」
「うーんどうでしょうね。知ってるような、知らないような?」
こいつ……蜘蛛人間の所にはペニーニャイアンも一緒に連れてきた。何せこいつだって教会の巫女……の筈だ。何か怪しい感じになってるし、教会的には既に切り捨てた存在なのかも知れないが、それでもそこらの奴等よりは教会については詳しいはず。
(まあその認識も当てに出来ないような気がしてならないが)
なにせペニーニャイアンの奴、役に立ったことあったか? という感じだ。こいつが偉いってのは実は自称何では? と疑ってたりする。マジでこいつが偉い要素ないんだよね。何せ教会が全然ペニーニャイアンを重視してないって言うね。それがほぼ原因だ。何の交渉材料にもならなかったし……一応連れてきたが、それってほぼピローネの押さえにペニーニャイアンが必要だったからだ。それがなかったら、連れてこなかった可能性もある。
実際、ピローネをこの蜘蛛人間と同じように砂獣へと変質させたペニーニャイアンだが、戻し方知らないし……でももしかしたらその方法をこの目の前の蜘蛛人間なら知ってる可能性はある。
「はっきりしろ! 貴様はここでは何の権限もないんだぞ! 痛めつけて吐かせてもいいんだ!」
血気盛んな人がそんなことをペニーニャイアンへと言ってる。まあ実際こいつは少しは痛い目に遭わせてもいいとは思う。勇者としてそんな発言はどうなんだと思うが、ペニーニャイアンは何か高を括ってる感じがある。もうちょっと責任を感じさせた方が良い。けど皆さん巫女という立場に及び腰だから、拷問的な事はしてないんだよな。それにピローネの事もある。ペニーニャイアンに何かしたらピローネが暴れる可能性がある。それを怯えてる。
自分とジゼロワン殿が居ればどうにでもなるが、それでもピローネは普通の人から見たら化け物以外の何物でもない。だから恐怖を感じても仕方ないと思う。でも色々としがらみとかなんとか考えてるのは上の人達で、こうやって牢を護ってるような守衛の人はそこまで考えてないからこんな風に強く言えるんだろう。なにせペニーニャイアンも同じ場所に少し前まで入ってたからな。
この人はペニーニャイアンも罪人……と言う認識でしかないんだろう。
「ふん、気安く私に話しかけないで」
そうぴしゃりと言ってのけるペニーニャイアンは流石だな。一応ここはこいつにとっては敵地のど真ん中の筈なんだが……怯えたような様子もないし、相変わらずわがままに振る舞ってる。けど最低限の生活しかさせてはないけどね。お世話係の人達にもラパンさんが過度に世話しないように言ってるようだし、中央に居たときに比べたらとても不便だろう。
けどそれでも「巫女だ。巫女だ」と言ってるんだから、そのメンタルは凄いと思う。
一蹴されたその守衛の人はなんか眉毛ピクピクしてるし……本当に教会の人間って相手を怒らせるのが上手いよな。その手腕だけは認めてあげたい。
「本当にあれを知らないのか? それならやっぱり、お前はそこまで重要な巫女でもなかった……と言うことだな」
「な!? そんなわけ無いじゃない!」
自分が煽ってやったら、すぐに乗ってきた。チョロい奴だ。まあけど重要な情報全くなかったから、やっぱりペニーニャイアンはお飾りの巫女らしい。