『とりあえず、この砂獣の止め方教えて下さいますか?』
「それは……私は合格ということですか?」
『それは……』
どうしたら。実際この瞬間にも、ダンゴムシはザンサンシャカレへと迫ってる。そんなに猶予はない。だって、これだけの巨体である。実際速度だってそこそこある。勢いがあると、余裕をもってブレーキを踏まないと想定よりも長く止まるまでにかかるだろう。それと一緒だ。ダンゴムシだって今はきっとスピードを出してる状態だ。このままこのミレナパウスさんとまだ教会が牛耳ってるダンゴムシ以外の三匹のダンゴムシが突っ込んだら……それこそ途中で止まったとしても……だ。
それはかなり悲惨な惨状になると、誰もがわかる。まあ実際、この街は都市核を持っていく時点で放棄することになるわけだけど……このザンサンシャカレに居る住民はそれこそ一緒に連れて行く予定なんだ。
それなのにこのダンゴムシが突っ込んだら、一体何人の住民が生き残れるのか……なにせこの街の住民は皆が皆が飢餓状態だ。私が雨を降らせたことで、まだなんとか生きてるって感じ。雨を降らせたことで、水を飲むために外にいるが、そのまま倒れてる人達がたくさんいる。もう動くことも出来ない。つまりは逃げるなんて無理なんだ。
きっと振動が近づいてくるのはザンサンシャカレの住人たちは気づいてるかもしれない。けど……彼らには避難なんてもう無理だ。このダンゴムシが突っ込んできてる反対側に皆が逃げてくれるのなら、まだ猶予はあったかもしれない。けど無理だ。
だからさっさと止めにかかったほうがいい。けどそれにはこのミレナパウスさんを仲間にしないといけない。実際、この人を一時的に仲間にしておく……くらいは別に良い気がする。なにせもしも裏切っても、そんなに脅威ではない。何を考えてるのかわかんないし、ちょっと常識? って奴がなさそうなのが恐ろしいが、そこはきっと勇者が教えてくれるだろう。
それにそういう常識の無さも教会の中で育ったのなら仕方ないって思えるしね。でも聞いて置かなければならないことが一つある。
『一つ、教えてください』
「何でしょう?」
『貴方はこの世界に未練とか、そんなのはないのですか? もしも私達と世界を渡ったら、戻ってこれる保証はありません』
私はそれを伝える。私達は確かに世界を渡ってる。けど、意図的に……どういう風に……次にどの世界に渡るかを決めてなんかない。それは完全にランダムなのだ。つまりはここに戻ってくる事は実質出来ない……と思ったほうがいい。もしかしたら私が頑張ってG-01を強化、改修していくことで、世界を『渡る』ということが自由自在に出来るようになる可能性はあるけど……それも保証なんて出来ないからね。
「私は……この世界の、中央の、それも大聖堂くらいしか知りませんでした。こうやってここに来たのも無理を言って来たのです。それで私は思いました」
世界は広いとかだろうか? 定番だよね。
「なんと味気ない世界なのだろうか? と」
なんか私が思ってた応えと違った。どうやらミレナパウスさんはすでにこの世界に失望してるようだ。
「それで確信しました。この世界に価値なんてないのだと。だから私は価値ある世界へと行きたいのです。私の価値はただ死んで利用されるだけなんかじゃない」
『わかりました。とりあえずその話を受け入れましょう』
私はそう言って、ミレナパウスさんを受け入れた。そしてミレナパウスさんがこっちに寝返ったことで、ダンゴムシは止まり、そして残ってた教会の奴ら……うん、皆殺しにすることになった。捕虜でも良かったんだけど、ミレナパウスさんがどうやら忠誠みせるためなのか、嬉々として教会の奴らを殺しまくった。
私はそれを映像越しに見て、やっぱり早まったか? と思った。