『お願い……もうずっと淀みが僕たちを邪魔してるの』
そんな声が聞こえてきた。幼いような、けど大人のようでもある声だった。てか何重にも聞こえてるのかもしれない。だけど発してる言葉は一つなのか、野々野足軽の耳には一つの言葉しか聞こえない。
「よどみ?」
『うん、お願い来て!!』
そういってキラキラとしてる風が野々野足軽にまとわりついてくる。周囲には平々凡々の男子高校生というのを演出してる野々野足軽としてはこの風は困る。なにせ目立つ。こんなキラキラしてる風を纏ってる平凡な男子高校生がいるだろうか? いやいない。なのでさっさと風っ子の願いをかなえてあげることにした。
色々と気にしてないといけないことはおおいが、日々その力が伸びてる成長期の野々野足軽だ。だから前みたいにちょっと力を使ったらもう疲れてしまう……なんて段階はとっくに超えて、いまや日夜力を使い果たすのに頭を悩ませるくらいだ。なにせ力を使い切らないと力が伸びないからなるべく力を使い切る様にしてる。
まあだからこそ、自分だけじゃなく他の人にも手伝ってもらうおうってことで他の人にも自身の力を分け与える……みたいなこともやってるのだ。なにせ本当なら、そんなリスキーな事は野々野足軽だってやりたくなかった。
でも日々大きくなっていく自身の力……それをちゃんと使い果たすためには誰かの手が必要な段階になってたのだ。まあようは力を与えられた者たちは野々野足軽に都合よく使われている――といえなくもない。
「しょうがないか……」
このまま無視をしても、相手は風である。何回だって来るだろう。それにそれはきっと境なんてない。境というのは、いつ来るか……とかいう遠慮というか、配慮である。でもそれを考えるのは同じ人――という生命体だからであって、風となるとそんなのはないだろうって野々野足軽は思った。
それに風となればどこにだって現れることができる。もしもここでやらないで、もしも学校の……それも教室であんなキラキラとした風が野々野足軽にまとわりついたらどうなるだろうか? そんなのは大騒ぎだ。無視したって余計に面倒なことになるのは確定してる。なら、さっさと今、その問題は解決した方がいい。