炎が多くなっていく。それだけじゃない、何やら耳鳴りのような……そんなのが頭を痛めてくる。でもまだ……まだなんとかなる。なんとか……
「ひっ!?」
その時、どこからとも無く現れてた炎が服についてた。そうだ……なんで……なんで飛んでくる炎を避けてたら大丈夫だと思ってた? 確かに周囲からポッと現れてそして向かってきてた。だからこそ、そういう物――だと思ってたんだ。
とんでくる攻撃だと、そう思わされてた。でも炎なんだ。そもそもが術師の手からでてるわけじゃないのは確認してる。なのになぜ、その場で燃やされないのか? って考えなかったんた。
「くそ!」
そう言って俺はなんとか炎を振り払おうとする。けど意味なんてなかった。なにせ普通の火じゃない。魔法の火だ。実際魔法の火と普通の火の違いなんて俺にはわからない。
けどヤバさは感じる。俺の手の裾に燃えついたその火は一気に広がっていく。裾から腕に、そして肩……そこまで行くと顔にも熱が伝わってくる。息を吸うと喉が焼けるような痛み。更には胸腹……と身体の大きな部分にまでも燃えたらもう消すなんて自力では無理だ。熱い……熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!
あっという間に俺の視界は真っ赤に染まった。そして真っ暗になる。目も焼けたんだろう。そして身体も動かない。俺は死んだ。
「何やってる! 起きろ!!」
そんな声が聞こえて、俺の肺には空気が入ってきた。
「生きてる!?」
俺はガバっと腕を地面に当てて起き上がり空気を吸う。旨くはない。でも生きてる……その実感がある。それだけで涙が出てくる。
「うっうう……」
「泣いてる場合! すぐにあの世に戻ることになるぞ!!」
「ぐげ!?」
俺は女に蹴られた。そして壁にぶつかる。けどそのおかげで炎から逃れたらしい。俺がさっきまでいたところに炎の玉が当たって燃えてる。何もないのに、こっちにまで伝わってくる熱気。それはさっきの出来事を思い出させるには十分だった。
身体が震えてくる。力が入らない。
「もう助けないぞ。腰抜けならそのまま死ね」
そんな無情な言葉が掛けられる。足手まといを面倒見る義務はこの女にはない。それはそうだ……俺は涙を拭って立ち上がる。