眼の前で燃え盛る女。最初は小さな火がその背中に点ったように見えた。けど次の瞬間……それこそまばたきをした時間くらいだろうか? 次に見たときには女の身体は炎に包まれてた。まさに俺のときと同じだ。
飛んでたから飛んでくると思わされた。いや、俺は一回食らってるの。なのに……その時まで全く気づかなかったなんて……俺は馬鹿か!!
「うおおおおおおおよくも!!」
俺は仇を打つためにも更に前に進む。わずかに薄くなった炎の玉。そこに身体を滑り込ませて前に進んでそしてもちろんだが、覚悟だってしてる。もしも火が着く覚悟。その時は一気に服を脱ぐ。観察してて気づいたが、やっぱりだけど炎は身体に直接じゃなく、まずは服についてるってわかった。
だから火がついた瞬間に脱げばなんとか……なんとかなるかもしれない。それよりも先にこの剣を届ける。なにせ教会のやつは一人を倒したことで油断してる筈。
「愚かな」
そんな声が聞こえたきがした。そしてこっちに手を向ける。その手にはこれまでの火の玉なんかじゃない火が踊ってる。その瞬間
(あっ死ぬ)
――と俺は思った。確実に向こうの方が早いとわかったんだ。確かに未熟な俺だが、それでもどっちが速く届くか? くらいはわかる。確実におれよりも向こうの魔法の方がはやい。でもだからってすでに剣を振ったモーションをしてる俺にはこの行動をキャンセルするのは難しい。
(一矢報いるなら、死んでも振り抜くしか――ない!!)
もう死ぬのならいっそ……と普通は思うかも知れない。でも俺はそれでも……
(やっぱり死にたくねえ!! 誰か助け――)
そんな思いが拭えなかった。女がやられた時に逃げていれば……いや、背中を向けた瞬間にしんでただろう。一緒だ。どうしたらいい? もうどうしようもなくなって怖くなる……覚悟も決められないのが、俺という人間なんだろう。一度は決めても、死がそこに見えたら、怖気づいてしまう。
でも次の瞬間、教会の奴が向けてた腕がズレて落ちた。
「んが!? なに……なぜっ!? 貴様――」
そうしてそのまま、教会の刺客は顔が半分に分かれて死んだ。もちろんそれをやったのは俺じゃない。炎に焼かれたはずの女だった。