『どこいったの? 幻聴だった? でも……そんな……私……』
再び穴の向こうの風の少女のところに来てみれば、なんか風の少女が負のオーラを出し始めてることに野々野足軽は気付く。さっきまではそんな事はなかった。確かに悲しんでたけど、けどそれでもそれだけ……と言えたと思う。まあ周囲は攻撃してたけど。
でも今はそうじゃない。もっとなんか悪くなってる。てかさっきまではまだ綺麗だった。いや、風の少女はきっと真剣に困ってたと思うし悲しんでたと思う。けど、彼女が放つ力によって崩れてる空間はある意味できれいだなって思える光景だった。
だってこの暗い空間に彼女の鎌鼬の様な風で刻まれると、その刻まれた部分が崩壊して色がついてた。暗い空間に灯る向こう側の光ともいえるそれ。それをきれいだと思うのは仕方ないと思う。
なにせどんな影響が起こるかわかんないからだ。ちっさな穴なら大丈夫かもしれない。けどもしも野々野足軽の開けた穴がいっきに広がったりしたらどうなるんだろうか? その空間にいろんな物が入ってそれこそ空気……それだけじゃなく、その影響下にある土地とかすべてが吸い込まれたら? そんなブラックホール的にならない……とも限らない。だから下手に実験も出来ないだろう。
でもここならそもそもが空間が違うんだからいくら傷つけても良い……とはならないかもだけど、自分がやってるわけじゃないし――と野々野足軽は思ってた。
だからただ堪能する……ということができてた。けどそんな悠長なことを言ってる場合じゃない。
(俺が現れたことできっと彼女には希望が見えたはず。けどすぐに消えたから、その希望が絶望とかに変わった?)
野々野足軽はそんな分析をしてみた。きっと希望を見た分、絶望が半端なかったんだろう。そのせいで、彼女の心……があるのかはわかんないが、それは限界を迎えてしまった。
そのせいで、力から負のエネルギーが溢れ出てる。
『なんで……どうして……私が……私だけが……こんな……』
「まて! ほら、俺はここにいるから! 助けに来たんだ!! 今度こそちゃんと助ける!」
そう野々野足軽は声をかける。声というか、思考をぶつけるようにする。普通ならその加減がとてもむずかしいことだ。下手に人間に思考をぶつける……なんてしたら下手したら脳を破壊することになる。そうでなくても思考をただぶつけるだけでも人は昏倒したりする。
だから気を使う必要があることなんだけど……今はかなりの強さで野々野足軽は思考を黒く染まっていってる風の少女にぶつけた。なぜなら気づいてほしかったからだ。
絶望から救い出すために、希望が来たんだと……そうつたえたかった。そのためにも少々荒っぽくてもしょうがないと思った。なにせ風の少女は暴走してる。それを抑えるためにも、一回止まってもらった方がいい。けど……
『ああ、また私をあざ笑うのね……』
風の少女はその不安定な力の集まりを固定させていく。さっきまでは揺らめく一つの集団というか、そんなのだったわけだけど、今は暗く大きな力に固まっていってる。それはまるで絶望が姿を表そうとしてる……そんな感じに野々野足軽は感じてた。