自分自身も驚いた声。でもそれに砂獣達はなんかめっちゃ反応してる。奴らが俺たちの言語を理解してる――なんてことはないだろう。なにせ奴らは害獣である。ただただ人を食うために存在してるモンスターだ。
そしてその食う――は生きるためじゃない。俺たちを滅ぼすためだ。だから奴らにとって俺たちは餌でもない……向こうからしても俺たちはただの害獣なんだろう。だから奴らが俺たちの言葉を理解する必要なんて一ミリもない。だってそれを理解したとして、いい事なんて一つもないからだ。
だからこいつらは俺のわるぐちに反応したわけじゃない。ただその声の大きさにでも反応したんだろう。まあそれにしては……それにしてはちょっと……なんか
(怒り?)
――みたいなのが見えるような気がするが。きっと気のせいだ。そんなわけない。なにせ一斉にここら中の砂獣から怒りを向けられたら、流石に怖い。俺のこの気合も一瞬で消え去ってごめんなさい――とするかもしれない。
けどこんな戦場でそんなことは絶対にできない。だからこの砂獣から向けられてるように感じる怒り……は気のせいだ。俺はだからこそ、より強く目の前の鎌持ちの砂獣を殴る。
その細長い首が大きく揺れる。けど、ちぎれるまではいってない。ちぎれたら殺せたかもしれない、けど無理だった。さらにその背後から別の砂獣か来る。俺はそれも殴る。
「あいつに向かってるぞ!」
「なんで?」
「でも今の内に武器を――」
「てかなんであいつは殴って砂獣を吹き飛ばせてるんだ?」
俺に砂獣が集まってることに皆が疑問を持つが、これは長く持たない。早くどうにかして戦場に復帰してほしい。そしてまだ無事な人たちは俺に夢中な砂獣を背後から仕留めてほしい。
俺にばかり気を取られてる砂獣なら、いくら強化されてるといっても倒すことは普段よりも簡単なはずだ。そしてそれは正しかった。武器が残ってる人たちは砂獣の背後から攻撃をしてくれてる。けど、どうやら予想よりも残ってる人たちが少ない。案外肉体よりも武器を損耗して失ってる人達が多いみたいだ。確かに考えてみたら、普通は体を損傷するよりも武器を損傷する方が確立は高い。
なにせぶつけあってるのは武器なんだ。普通は先にそっちがどうにかなって、そして体に攻撃が届くようになる。けど体は聖女の魔法で治る。でも聖女の魔法でも武器は治らないから、武器をなくしてく奴らが増えていく。
これってまずいんではないか? 俺は砂獣を殴りながらそんな不安を抱いてる。