いくらゴブリンがいいと野々野足軽が思ったとしてもそれを世界が受け入れて、ドラゴンからゴブリンにしてくれる……なんて配慮はないし、それをしたかったらそれこそ野々野足軽が『力』でもって現実というリアルを書き換える……とかしないといけない。
でも……もちろんだけど、流石にそんな力は野々野足軽はない。だから覚悟を決めるしかない。実際、なんか出てきそうだが、あのドラゴンがあの穴から出てこれるのかはわからない。だから放っておいてももしかしたらいいかもしれない。
(なにせ今はモンハンでいうと激昂状態みたいなものだよな……)
――と野々野足軽は考える。そうなると攻撃力も上がって、そして暴れまくってとても危険なのだ。その時に近づいて攻撃するんじゃなく、落ち着くまで待ってる――というのも戦略としては正しい。まあけど……
ドン! ドン!
でも相手はドラゴンである。その内その怒りが落ち着く……かは正直分からない。それに風の少女が絶望の果てにあの姿になったのだ。絶望の果ての怒りが果たして落ち着くのか? とか野々野足軽にはわかんない。
だって野々野足軽が聞いたことある怒りの話はそれこそ日常での怒りの事だと思う。日常のちょっとしたことで怒りを覚えたとき……どうそれを落ち着かせるか……とかの事。けど絶望からの怒りは日常で芽生える比じゃない筈。今回のドラゴンは怒りの深さ? とかがきっと違う。待っててもこの激昂状態が落ち着くのかはわかんない。下手に待ってて、もしもこっちの空間にあのドラゴンがやってきたら……
(そんなことになった世間が絶対に混乱するだろうな)
結構上空にいるといっても、今の世の中誰もがその手にカメラを持っているといっていい。そう、スマホである。日夜メーカーが研鑽して切磋琢磨の果てにスマホのカメラは進化してる。それに今の地球にはそれこそどこにだって人がいるだろう。どこで誰に見られてるかなんてわからないのだ。
こっちの空間に来させるわけにはいかない……と野々野足軽は思う。あのドラゴンが野々野足軽を追ってこようとしてるのなら、再び野々野足軽があの穴の向こうに現れることでそっちにドラゴンの気を誘うことができるだろう。
けど……
(またあの穴に手を……)
手が痛む……復活してるが、嚙みちぎられた手の感覚はいまだにある。野々野足軽の再生した手はまだうまく動かせない。