「なにあれ? 大丈夫なの?」
明らかにあの状態は体に悪いだろう。無理してないはずがない。そもそもがあれってあの花の効果が切れたときには元に戻るのだろうか? だってめっちゃ体が大きくなってるよ。あれでもしも体が戻るとしたら……ちゃんと全身の骨は正しい位置にあるのだろうか? すべての関節が外れてる……とかあってもおかしくないと思うんだけど。
けどそれだけ無理をしてるおかげなのか、はっきりいってかなりあの状態の教会の奴は強い。なにせ砂獣さえも一刀できるザンサンシャカレの人たちのレプリカ武器が通ってない。溢れ出てる魔力がどうやら剣のインパクトをズラしてるみたいな? まともに当たってない。いや当たってるが、溢れ出る魔力がシールドのようになってて、体に沿うように滑ってるといった方がいい。
「うああああああああああああ!?」
「止めらんねえええええ!?」
弾き飛ばされたり、そもそもが剣を腕で止めたりして投げ飛ばしたり……それはまだいいほうだろう。だって……
「あがっ……このっ……はなっ――」
その屈強な体に抱き抱えられた一人の兵士がいた。そいつは腕を背後に回されてだいしゅきホールドをされてた。筋骨隆々の男にそれをやられて喜ぶのは絶対に同性ではないだろう。
そして勿論、それをされた兵士は抵抗してた。でも……最後には全身からバギバギという音ともに全身の穴という穴から血を吹き出して動かなくなった。そしてそのダンゴムシの上からはザンサンシャカレの兵士は一掃されてしまった。
「まさか、あんな隠し玉があるとはね」
いや、寧ろ何もない……なんてそんな楽観視はしてなかった。でもあんなドーピングみたいなこととはね。だってアレは絶対に何かを犠牲してる。それは間違いない。ようは私達は教会の連中がその犠牲に『自分自身』を含めるなんて思ってなかった……ってことだ。
だって奴らは何よりも自分たちが好きな奴らだろう。けどそれと同じくらいに、もしかしたらあの目隠しの聖女には心酔してるってことなのかも。
「自分自身を犠牲にしても……」
その覚悟はすごいが、それをどう見てるのか……目隠しの聖女の感情は流石にわかんない。一応心拍とかはモニタリングしてるが……一定のリズムしか刻んでないからね。つまりなんとも思ってない。あのデッカくなった教会のやつに言ってやりたい。
「その覚悟、全然彼女には響いてませんよ」
――ってね。すると多少はショックを受けるんじゃないだろうか? それに目隠しの聖女は案外いっぱいいっぱいなのかもしれない。だってずっとアズバインバカラの兵士たちが弾を撃ち込んでるからね。全然届いては無いが、目隠しの聖女はずっと結界を維持して、周囲に風を起こして毒の影響を受けないようにしてる。
それにそれは自分たちの場所だけじゃなく、他のダンゴムシにも影響が出ないようにやってる。目隠しの聖女のダンゴムシを中心にしてるから、どこか適当な場所に毒を流す……ということはできない。だからどうやら目隠しの聖女は魔法の風で毒を高く上げてそれで遠くに流してる。
その制御でいっぱいいっぱいなのかも。
「でもこれで、あのでっかくなった教会のやつも止まるしか無いし……」
そんな事を言って私は観察してた。なにせ距離が離れてる。近くのダンゴムシにむかう……なんて……けどなんかでっかくなった教会の奴は、それぞれ別のダンゴムシの方向を見て何回か屈伸をしてる。そして助走をつけて走り出す。
ドスドスドスドス――
そんな音を立ててダンゴムシさえを揺れてる。そして一気にジャンプした。
「いやいやいやいや――」
私はそんなふうに「まさか」とか言う感じていってた。けど……なんと届いちゃったんだよねこれが。おいおい、やばいよこれ。