uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力が目覚めた件 410P

(俺は何を!?)
 
 いまさっきついた言葉が信じられないように桶狭間忠国は口を抑えた。まるで自然に、いや……そう言うべきであるかのように、勝手に「そうか」と口に出してしまってた。
 桶狭間忠国の視界にはまだ困ってる女性が写ってるというのに……だ。それは彼には信じられないことだった。
 
(今の……それがこの女の『力』か……)
 
 桶狭間忠国は何かおかしい『力』があると理解してる。野々野足軽は何も詳細には語ってくれない。だが、あれはきっと『神』的な何かだとおもってる。だからこそ、そういう存在が存在してると桶狭間忠国は認識してる。
 そしてこの眼の前の妖艶な女性……この人にも桶狭間忠国は不思議な力がある――と確信した。
 
「どうしたんですか? ここは大丈夫なんですよ。さあ、お仕事に戻ってください」
 
 耳に自然と入ってくる……そんな声。優しい声音……一見すると、何も問題なんて無いように思える。
 
(はっ!?)
 
 桶狭間忠国は気付いた。それは周囲の変化だ。さっきまでこの二人のやり取りに皆が注目してた。揉めてたようだったから、心配してたんだろう。だからこそ、桶狭間忠国も気づいた。けど今はどうだ? 今の彼女の言葉がきっかけだろうか? 誰ももう足を止めてない。いつもの駅前の風景に戻ってる。何も状況的には変わってないのに……これは……
 
(きっとあの存在は意識を操れる! ヤバいな……だがどうして俺はそれに気づいた?)
 
 そこで「ふっ」と桶狭間忠国は笑った。確信したからだ。
 
「神よ、我を見守ってくださってるのですね」
「「はい?」」
 
 朝倉先輩もそうだけど、悪魔の女性も同じ様に言葉を出した。なにせいきなり現れた大男が「神」へとなんか言ってるのだ。それはこういう反応にもなる。そもそも見た目だけなら完璧に神に反抗してる格好である。そんなやつからまさかの「神」という言葉……ミスマッチ過ぎた。
 
「あんたの力は俺には効かない!」
 
 そんな風に桶狭間忠国は悪魔が宿った女性に啖呵を切る。それを聞いて朝倉先輩は「力?」とか疑問を浮かべてるが、まっすぐに見られてそれを言われた悪魔は鋭い目を桶狭間忠国へと向けている。
 カチンと来たのかもしれない。
 
「まったく、なんのことでしょう……か」
 
 ゆっくりとそんな言葉つぶやきながら、悪魔の女性は一度目を閉じる。そしてもう一度開けると、その目が明らかにさっきまでの目ではなかった。白目まで赤くなって、瞳孔が猫のように細く、そして金色になってる。