(信じる心……か)
どうやら桶狭間忠国は心の底から野々野足軽の事を信じてるからこそ、悪魔の精神支配ともいえるその力に抵抗することができたみたいだ。でもその心を知ってしまったから、申し訳なく思ってしまう野々野足軽だ。だって桶狭間忠国はきっと悪魔に何かをされたと思ってて、そしてそれが自分に効かなかったのは野々野足軽に守られたから……と思ってるのだ。
(いや、まだ間に合う!)
気づいてない……そして信じてるのなら、まだ間に合うと野々野足軽は思う。確かに一度は野々野足軽の力が悪魔に突破された。けどそれを桶狭間忠国は強靭な精神ではねのけた。それは野々野足軽にもだけど、悪魔にだって予想外……そしてそんな桶狭間忠国を見て、悪魔はきっとこう思ってる。
((まさか、この筋肉ダルマにも力が?))
――とね。桶狭間忠国の言葉的にはその裏に誰かがいる……ととらえるのが普通だけど、実際そんな存在なんて早々いないだろう。悪魔が悪魔的コミュニティを持ってる……とかなら桶狭間忠国の発言を深堀してその裏にいる人物を探ろうとしてるはず。でも悪魔はあくまで、目の前の桶狭間忠国を警戒してる。
つまりは悪魔は、自身の力を防いだのがあくまで桶狭間忠国だと……そう思ってるということだ。きっとそんな存在がそうそういるはずないから、桶狭間忠国が自身の力を隠そうとしてる……とか思ってるんだろう。自己承認欲求とかが強い奴なら『力』を隠すようなことはしないだろうが、けど今の世界……そんな『力』はファンタジーの産物としか認識されてない。それってつまりは、もしも同じような力を持った奴らがいたとしても、大半はその力を隠してるからってことだ。
それこそ野々野足軽のように。だからこそ、自身の力を隠そうとするとこに悪魔は違和感を持たないんだろう。
「厄介だけど、行幸よ。私はあんたをくらって、より力を高める。誰も上り詰めたことがない領域までいく」
そういう悪魔はよりその力を高めてる。そして尻尾を自己修復した。そんな事できるのか……でもそれなら……
(悪魔があくまで桶狭間忠国に力があると思ってるのなら……)
そう思って野々野足軽も桶狭間忠国にへと力を通す。それは桶狭間忠国を青い光で包んで、その傷を癒しだした。それに一番びっくりしたのは当の本人である桶狭間忠国だ。けど彼は何もいわない。ただそれを享受する。ただ心では「感謝します」とだけ呟いてた。
傷を回復させたことで、桶狭間忠国は立ち上がる。そして一つ……彼は目の前の女へと質問をする。
「お前は人……ではないんだな?」
「私は覚醒したわ。もう私は人間なんて下等な存在じゃない。より上位の存在へと至ったの。下劣な質問はやめてくれる?」
「そうか……わかった……」