神が手引きしてるのか、そのポイントまで本来なら沢山の砂獣がいたんだが……何故か襲われることがなかった。奴等は人とそれに近しい存在をみると問答無用で襲ってきてたはずだ。それは魔族の我も例外ではなかった。そもそもこの世界には人種以外には居ないからな。そこら辺を識別する機能がないのかもしれない。
頭があって胴体があって、腕が二本に足が二本あって二足歩行してれば襲いかかってくると正直思ってた。けどどうだ? ここまで明らかにそこら辺に砂獣が出てて、本来なら近づくことさえもためらうような場所なのに、砂獣達は我を観ると避けていく。
「いらん気の利かせ方だな」
確かに煩わしいだけの存在だ。この程度の砂獣では児戯でしかないからな。この世界の連中ならこの場所を観ただけで足早に逃げ帰るだろう砂獣の密度だ。だがここにいるのは見知った砂獣が多い。特別な場所ならその守りとして特別な砂獣でも用意してるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
「つまらん」
少しは期待したんだがな。それにいつもの砂獣が児戯でも襲ってくるのならお遊び程度には相手にしてやったというのに。流石に何もしてこない相手を倒してもそれこそ何の価値もない。だからさっさと用事を済ませるか。
ポイントの真上に我は立つ。この座標がなかったら本当にただの砂の上に我はいる。別に遺跡の一部が露出してる……何てことも一切ない。本当にただの砂漠の一角……一角でもないが、ただの砂漠のど真ん中だ。
いくつもの街は堕ちて砂に埋もれてるらしいからな。その余波でこの遺跡も埋もれていって久しいんだろう。
「さて、どうするか……」
周囲の砂を消失させて、遺跡を掘り起こす……と言う手段もあるが……辺りは一面砂だらけだ。一部の砂を消失させてもそこに流れるように周囲の砂が堕ちていくだけで意味が無さそうだ。なら此方から直接行くしかないか。
我は自身の周囲に黒い球体を作り出す。するとそれに触れてる足下の砂が消滅しだして、我の体が砂に沈んでいく。これで遺跡のある所まで堕ちていけるだろう。その後は……まあ多少壊してもきっと大丈夫。ジゼロワンは丈夫だったからな。遺跡もその関連の奴等が残した物なら、きっと丈夫なはずだ。
そしてかなり堕ちてきて、光も全く届かないところまで来た。普通なら何も見えないはずだが、我の目にはちゃんと見える。この体の性能もそうだが、そもそもか我は闇に強い。だから普通なら見えないだろう物が見えてる。
「あれか」
力をコントロールして堕ちるのを止める。そして側の遺跡を観るが……これは……
「これは……反転してないか?」
砂に埋もれてる建物はなんと上下様々埋まってた。どうなったらこうなるんだ?