「そうですか。結局あいつは行きましたか」
『寂しいとか有りませんか?』
「別にそんな気持ちはありませんよ。寧ろ清々しています」
『そうですか。それは良かったです。それと後で新しく仲間になったアイを紹介しますね。全くあの子は何処に行ったのやら』
「魔王を連れ戻せなかったことに責任を感じたのかもしれませんね。責任感の強い方のようで、自分とも相性が良いかもしれません。魔王の奴は「戦え、戦え」と五月蠅かったですからね」
私は魔王が去ったことを勇者に伝えてる。そして帰ってきた反応がこれだ。勇者は確かに最初はなんでこんな奴と……感を出してたが、今は結構上手くやってたと思ってる。確かに魔王は唯我独尊感が強くて、反抗的だった。それに対して勇者は協力的で、そのしわ寄せって奴はあったかもしれない。
でもそれでもああいう賑やかな奴っていてくれるだけでその場を盛り上げてもくれるし、危険とかは真っ先に突っ込んでいったりもしてくれるからね。まあそのフォローが勇者に行くんだけど……そう言うのがイヤだったのか……実際イヤではあっただろうが、それでもめっちゃイヤって程ではなかったと思う。
だって戦ってるときとか、思いっきり勇者だって戦ってたし、それこそ遠慮が無い付き合い? みたいなのやってたと思う。魔王と勇者……元の世界では互いに殺し合ってたからこそ、其処に遠慮なんて物は必要なかった。
それって精神的には助かることもあったんでは無いだろうか? 私がいくら歩み寄ろうと思っても、私と勇者ではどうしても上下がある。それを魔王は意識してなかったけど、勇者はそういうやつでは無い。
真面目だからね。その真面目を上手く解きほぐしてたのが魔王だったのかもしれない。それに言葉ではそんなことを言ってるが、何も言えなかった事には後悔してそうな……まあわかんないけど。
『アイとも上手くやってくれると助かります』
「そういうのは得意ですよ」
確かに魔王と違って勇者はとてもコミュニケーション能力が高い。だいたい初めて行く世界で知的生物と出会うときは勇者を矢面に立たせた方が良い……と学んだ。なにせ人当たりが上手いよね。
魔王は雰囲気からしてツンツンしてたけど、勇者はそういう雰囲気が無くて優しさが溢れてるからね。多分そう言うところもコミュニケーション能力に出てるんだと思う。だってやっぱりいつもツンツンしてる人ってのは話しかけづらいし、話しかけられても萎縮しちゃうだろう。
それに比べていつだってニコニコしてる人は話しかけやすいし、話しかけられても良い気持ちで対応できると思う。やっぱり第一印象って大事だよね。私は勇者をみてアイのことを考えつつ二人の相性を考える。
(問題ないよ……ね?)
魔王よりもは負担を減らせそうな気はするが……二人とも真面目だからね。とりあえずアイの奴にも上手くやるように言っておこう。それがいいよね。