不思議だった。そう不思議だ。不意に私はそんな事を思った。そこは暗い泉なのか……それとも海なのか……わからない。ただ私はそんな下が水の桟橋の先に立ってる。服装は制服だったり、ワンピースだったり、パジャマだったりだ。
なぜかわからないが、気づいたら格好が変わってる。暗い水の上、でも不思議と自分は見えてる。それこそ鮮明なくらいに。別に私にだけスポットライトがあたってるわけじゃない。
周囲は真っ暗で、ただのさざなみだけがみえてた。そこで私は何をやってるのか……それは……
ジャキンジャキン――
私は自分の髪を切ってた。そして水面にその髪を投げ入れてる。何をやってるの? そんな風に自分でも思ってる。でも不思議とそれが楽しい。そもそも煩わしかったのだ。こんな髪……こんな……私は銀色に光るハサミを見つめてた。そこに映る自分の顔。私はその瞬間、自分の瞳に向かってハサミを――
私は気づいたら空を落ちてた。真っ青な空……もしかしたら海なのかもしれないが、でも、水がまとわりつく感じもないし、風も感じる、きっとここは空なのだろう。そんな事を思ってると、何かが一緒に落ちてきた。それは沢山の人形だった。けどただの人形じゃない。なんか何も着てない、そしてボロボロの人形だ。顔がデカくて、体が小さい……なんか外国の子供に与えるような……そんな人形。それが沢山……沢山落ちてくる。
「「「「あははははははははは、あはははははははははははははは、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」」」
周囲を覆い尽くそうな程の人形の大合唱。そして私にまとわりついてた。私は抵抗なんてしない。なんかボロボロでくさそうな人形なのに、案外暖かくて、良い匂いがする。それこそ太陽の匂いみたいな……
ただ声がうるさいだけだ。案外悪くない。私は人形におおわれてる。そしてなんかカプカプされてる。人形たちが私の事を噛んでるのだ。カプカプ……カプカプ……そんな時間がどのくらい続いただろうか?
私は雲の上に落ちた。ボフンって感じで落ちた。そして気づく……私の体……手足……色んな所がなくなってた。
そこは教室だった。いつもの教室、いつもの場所、いつもの席。夕暮れなのか教室の中は窓から赤い光が差し込んでる。誰もいない教室はとても静かだ。静かな場所は好き……私の神経を逆撫でしないから。
ふと何かの存在を感じた。隣からだ。隣の席はもちろん野乃野君だ。彼がいる。私にはわかる。たった二人の教室……いやこの世界にはたった二人だけのような気がする。だって外をみても、そこには何もない。ただ光があるだけ。黄昏の世界に教室がポツンとあって、その場所に私達がいる……みたいな?
とても素敵だと思った。そう……
「世界が二人だけになればいいのに……」
それはとても幸せなことだ。私は幸福感でいっぱいだ。