「お前に協会の何がわかる? いや、悪い事をここでされたのか?」
「そういうことは別にないですが……」
「なら、なんでそんな事が言える。協会は人々を導くために身を粉にしてるじゃないか」
「そうでしょうか?」
アヴァーチェはどうにか協会の正当性というか、潔白さを訴えている。けどそれに惑わされるようなプライムではない。いや、三歳児なら惑わされるのが普通だと思うが、プライムはそこらの三歳児ではないのだ。
「協会は立派な事もしてるでしょうが、不可解な事をおおいと思います」
「一体何がある?」
「例えば兄上が使ってるその力です」
「魔法の事か?」
「ええ、どうしてそれを市中に公開されないのですか? いえ、市中でなくても、せめて王家には共有すべき技術ではないでしょうか?」
まあ確かにそうだな。魔法を自分達だけで独占してるのはあまりにも……ね。腹黒いと言わざるえない。
「それは混乱を避けるためだ。こんな力を誰しもが持ったら、皆が混乱するだろう」
「確かに混乱は多少はあると思います」
「そういう事だ」
「ですが、王家に仕える兵たちなど、限定的にすればいいだけです。それに協会は世界の人々を砂獣の脅威から救いたいのなら、それこそ魔法という力を開放すべきではないですか?」
血浄というあの力も一種の魔法的ドーピングだが、あれは極めて限定的な力しか発揮しない。確かに身体能力が飛躍的に向上して、賞金稼ぎ達の役に立ってるが、それなら魔法だってそうなるはずだ。
そして協会が本当に世界を苦しみから救いたいと思ってるのであれば、それをやってる筈だとおもう。でもやってはいない。なぜか? 俺はこれまでの協会の上の奴らとの会話でその理由がわかってる。
協会の上の奴らは、どうやら太陽まで到達したいらしい。てかそういってたし。でもたぶんなにか条件というか……この世界と交わした約束でもあるのか、ただ人々が滅んで砂獣たちだけで太陽に到達しても意味はないのかもしれない。
町と町とのやり取りなんて、砂漠が隔たってるから、何日だってかかる。周囲が砂漠だから、食料は常に厳しいし水の確保だってむずかしい。でも魔法があれば……その力が広まれば、ある程度解決しそうな問題が多い。
協会が本当に人々の為というなら、魔法という力をもっと広めるべきだ。どうやら水の管理とかも中央がしてるみたいだし……しかも各地にめっちゃ高値で売ってるぞ。この中央のどこで水が湧いてる? 地面から離れてるぞ。
それなのに奴らは大量に水を得られて、そして各地に売るほどにある……どう考えても魔法で水を生み出して、それで暴利をむさぼってる。
本当に人々の為を思ってる奴らがそんなことをするだろうか? 甚だ疑問だ。