「「「なっ!?」」」
魔王は一瞬にして奴らが自身を守るために貼った結界を、それこそ紙の如く破り去って目の前に迫った。それが奴らは信じられないのだろう。
口をあんぐりと開けただけで誰も反応できてな−−いやどうやら向こうにもマシな奴はいるようだ。
「むっ」
「やはり……か」
そいつは魔王の一撃を受け止めた。さっきまで殴る蹴るの暴行を受けてたローブのやつだ。死んでなかったんだ……というか、あれだけ酷い扱い受けててよく前にでてきたね。
私ならこれ幸いとこんな奴ら絶対に見捨てるけど……それをしないなんて義理深いのか、それとも守らされてるのか……『ヘメ・レペス』と言う単語が頭をよぎる。そんな事を確かあいつは言われてたはずだ。同じようなローブを着てるが、一緒のように思われてない『ヘメ・レペス』とは一体?
「ようし! そのまま抑えておけ!!」
自分たちへと魔王の拳が届かなかったからか、息を吹き返した協会の奴ら。そのまま魔法を発動する。流石に近いからか、大きな魔法ではなく、いくつもの色とりどりの光が魔王を襲ってる。
「うざってえ!!」
そう叫んだ魔王。するとそれだけで魔法がかき消えた。
「「「は?」」」
またまたポカンとしてる協会の奴ら。戦場で惚けるのが好きなんだろうか? わかってるのか? 今まさにそこは戦場へとなってるんだよ? それなのにそこで頭も体も止めるとか……しかも魔王相手に……だ。
自殺行為と言っていい。
「やめてくだ−−」
「そっちがやめる気がないのなら、多少ぶっ殺してもいいだろう!」
今度はそのヘメ・レペスと言われてたやつの介入が間に合わなかった。いや、実際はちゃんと魔王を止めようと動いてた。
でも魔王の方が一枚も2枚も上手なのだ。来るとわかってれば対処なんてしやすい。さっきのは不意だったから魔王の一撃は防がれてしまった。でも今回は魔王もやつが来ると踏んでたから、うまくかわしてその後ろの一人を殴り飛ばした。
人の体が紙屑のよう吹き飛んでいく様はなかなかに滑稽だね。本当に死んだんじゃない?
「さあ、次は何奴だ?」
「ひっ、私を守れ!! 私のそばから離れるな!!」
そう言うのはさっき散々蹴ってたやつだ。おいおいだよ。さっき散々ゴミカスみたいに殴る蹴るして侮蔑の視線を向けてたと言うのに、自分の身が危なくなると、さっきまで侮蔑してた奴に助けてもらうとか……恥ずかしくないの?
「ははっ、それじゃあ他の奴らをぶっ飛ばすか−−」
「ヒェ!?」
「そんな!?」
「貴様ら離れろ! そして戦うのだ。奴を包囲して四方から攻撃をしろ!!」
護衛が来たからか、再び強気に出てる。てか多分自分の近くから少しでも魔王を引き剥がしたい−−って心理なんだろう。だから自分い害の魔王に狙われてる他の奴らを護衛以外は引きはがそうとしてるんだ。
本当にクズだね。でもそう思ってても、逆らえないんだろう。一応皆さん散っていく。けど魔王はそんな奴らに見向きなんてしてなかった。
「−−なんてな。俺様は一番ムカつく奴をぶっ飛ばすのが気持ちいいんだよ」
「ひえ!?」
そう言った魔王の凶悪な瞳に映った一番でかい態度を取ってるローブの奴は情けない声をあげてた。どうやら魔王の方が上手だったようだ。いや、魔王の場合は別に全員底に固まってたとしても強引に吹き飛ばすことが出来たと思うけどね。