離れてくれないのなら握りつぶせば良いじゃない――という精神を発揮した私は、とりあえずG-01の握力を発揮することにしたよ。なにせ手を広げることは聖剣の妨害というか、浸食によってうまく出来ない。けど開かないようにしてるだけで、握るという行為は出来てるのだ。なら更に握ることだって出来るでしょ。
というわけでめっちゃ力を込めて握った。その瞬間。
――グシャ――
という音が――いや、感触? が伝わってきた。いや、正確に言うと、伝わってはないね。なにせ私はまだG-01と感覚を完全シンクロしてない。普通にまだロボットをコクピットから操縦してる状態だ。だから感触までは完全にはわかんないが、手応えは感じる。なにせG-01は私の体の動きに連動してるからね。まあ大体上半身だけだけどね。下半身も動くけど、上半身に比べると可動域狭いんだよね。それにG-01と私の歩幅は圧倒的に違う。感覚が違いすぎるからね。
別に普通に歩くくらいなら、この中でも足を動かす動作で出来る。でも流石にこうやって縦横無尽に動いてるのを私の感覚というか、身体能力でやっちゃうとね……逆に弱くなるって言うね。私は自慢じゃないが、そんなに運動神経良くないし。
まあそれでも完全シンクロしたときは、ほぼ私の意思で動かしてるわけだけど、G-01のシステムは優秀なのである。色々と補助を行ってくれてるし、この通常状態なら、更にそれは手厚い。
というわけで下半身はあれだけど、上半身はかなり私の意思で動いてるわけで、その感触だって完全じゃなくても伝わってきた。
(ああああああああああああああああああああ!!!)
頭に響くそんな断末魔。私ではなく、そして当然、これは他の誰か……でもない。まあここには勇者が引き連れてきた何十人かの人が居るみたいだからね。
まだ私はその人達を見ても居ないわけで……どこかで悲鳴を上げてるかもしれないけど、今聞こえた悲鳴ではないはずだ。
(何を! 私じゃないと彼は救えないの!?)
「いやいや、あんたのせいで救える物も救えないのよ!!」
そんな事を言いつつ、調子に乗ってこっちを攻撃してた黒い勇者の攻撃を上手く受ける。上手く受けるって言うのは、腕で基本的に受けるんだけど、上手く腕のくっしゅんを利用して、向こうの攻撃いなして、更に上手くいなした後にちょっと力を込めて、黒い勇者を投げ飛ばしたのだ。
私上手い。上手く見えなかったけど、強大な勇者の力と、体的に乗っ取られてるが、こっちのリンクも実は完全に失われてたわけじゃないから、別に見えなくても勇者の行動は筒抜けだった。
さて……一回距離を開けることで仕切り直すことが出来ただろう。これでちょっと聖剣の奴にお灸を据える。自分の大切な勇者を取り返すために、どうしたらいいのか……それをちゃんと考えさせるのだ。