サーザインシャインインラの誇る美しい宮殿が崩壊し出してる。そこかしこで阿鼻叫喚がこだまして、逃げ惑う人々を砂獣が蹂躙してる。偉くても戦う力なんてない奴らは、自分達が「偉いんだぞ」とかなんとか叫んだり、買収しようとしてみたりしながら死んでいってた。
砂獣にはどれも何も意味なんてない。奴らはただ、人の命を奪う存在だ。そうやって世界を砂で埋め尽くす存在。それにどんな意味があるのか……まあ今はそんなことはどうでもいい。
今は目の前の老人だ。
「死んでる……」
そう死んでるのだ。砂獣にやられた? いや違う。なにせ、この部屋、一番この宮殿でいい部屋。要はこの部屋はとても豪奢なのだ。それこそ壁は金ピカだし、飾られた絵には……いや絵はよくわからない感じだが、その縁だ。絵を入れてる額縁にはキラキラと輝く宝石が散りばめられてる。そしてこの部屋は全然壊れてない。砂獣はこんな気を使ったりしない。砂獣が通った後に残るのは瓦礫だけ。いや、砂だけだ。全てを飲み込んでしまうんだからね。
まだ色々と残ってるのは途中だからだ。この波が終われば、サーザインシャインインラは砂の中へと沈んで、ここに街があったなんて誰もわからなくなるだろう。街も死体も、全てを飲み込んで消えていく。
「あんたは、最後に何を言ってたの?」
私はドローン越しにそんなことをつぶやく。なにせこのサーザインシャインインラのトップであるジジイは何やらとても面白い顔をしてる。それは口を大きく開けて、手を伸ばしてるっていう感じだ。その瞬間にまさに殺されました−−って感じだね。
「G-01の機能で何かないかな? 記憶を取り出すとか……」
そんな馬鹿な−−と思うなかれ、G-01様々な事ができるのだ。それにG-01も最近かなりバージョンアップしてその基礎を上げている。前の世界の時ような形状変化とかしちゃうような変化はしてないが、そういう大幅な変更を加えるよりも、下地を作ることを優先したからだ。
そっちの方が後々の選択肢が多くなるからね。おかげで探索力とか上がったし、自己修復力だって上がった。そもそもの耐久性だって向上したし、私が完全にシンクロしなくてもその操作性とか応答性が向上してる。
そしてもちろん受け入れられるエネルギーの総量とかも増えてるからね。前はそれこそアイがいたからそういう機能を素早く提案してくれたわけだけど……今はもうアイは別の体に移してしまった。
だからG-01のことは、私が自身で調べないといけない。これが地味に大変だ。一応簡易的な機能リスト的なものは炙り出して、一覧にしてあるけど……ズラーとかなりスクロールしないとだからね。検索をかけようにも微妙なニュアンスとかを汲み取ってたのはアイな訳で……要はアイは私とG-01の中間に入って橋渡しをしてたような感じなのだ。
そのアイがいなくなってるから、なんか音声でパパッと検索しようとしてもちょとね……まだ私とG-01の間には隔たりがあるのを感じるよ。G-01の高性能なスキャンで脳の中にある記憶さえも読み取ってくれればいいんだけど、流石にいつも使ってるスキャンでそこまでできたら恐ろしい。
まあつまりはできない。けどそこら辺の機能を深掘りしていくとありそうな気がするよ。