力が今までの限界を突破して聖剣へと集まってる。
(どういうことだ?)
おかしい。何となくそんな気がする。そんな気がするが……でも納得もしてる自分もいる。不思議とこのくらい今なら出来る……と思ってるのかもしれない。その理由はよくわからないんだが。
(これが領域……)
集中の極限……生身の時には時々こういう感覚はあった。それこそ生き死にがかかる場面やら、絶対に負けられない戦い……そういう時に入りやすいと思う。でも少なからず、戦闘ってのは常に死がある場所の筈だ。でも絶対にこの状態に入れる……というわけじゃない。
それに今までよりも……自分の人生の中で一番今、領域の奥に踏み入ってる感覚がある。なぜそう思うのか……それは三人を感じるからだ。三人というのは自分とそして聖剣、さらにいうと自分の中に存在を許されてるノアだ。三人の存在をより大きく感じる。いや、大きいというのも違うかもしれない。深く、そして確かに……だ。そもそもがそんなに普段は意識なんてしない。
聖剣はいつだって頼りにしてるが、だからっていつだってその存在を感じてるかというか……そんなわけもない。なにせ元の体の時よりも、より身近になった。今はもう聖剣をただ持ち歩く……なんてこともしなくていい。それこそ、今や聖剣は自分の魂と同化してる。それでも主張せずに、普段はおとなしく自分の中にいて、必要な時には何も言わずともその手に寄り添ってる。
それが聖剣だ。
ノアは五月蝿いが、自分の中で今や結構重要な部分を担ってる。なにせノアがいないと、この世界の力を変換して自身のエネルギーにすることはできない。もしもこいつがいないと、減っていくだけのエネルギーにビクビクとすることになる。ノアがいるおかげで、自身でエネルギーを得ることができるんだ。
一回ノアは反旗を翻したからか、最近はとても低姿勢になってた。なるべく自分から存在を決して、その役目だけを全うしてる……みたいな殊勝な態度だった。だからこうやってマジマジと存在感を感じたのは久々かもしれない。
(私の、勇者様)
(主、これは……)
二人……と言っていいのかわかんないが、二人とも何かを感じてるみたいだ。聖剣もノアもきっと自分という存在をより強く感じてる。そしてそれに困惑してる。自分達は同じ存在の中に共存する意識だとしても、きっとどうしても壁はあっただろう。でも何だろう。
(今は……そう……)
何だか不思議な感覚。自分も聖剣もノアも……その意識が思うことが重なってる。
(((自分も−−
私も−−
僕も−−この先を見てみたい)))
その瞬間、聖剣が新たな姿を見せてくれる。