「ほら、これ。結構高画質化してるんだよ」
「でも映画みたいにはできないんだね。ボケボケじゃん」
「これでもAIを駆使して、再現してるんだよ」
「でもそれってAIの想像とかにならない? だってAIってパターンしか再現しないでしょ? これが本当にこの通りなのか言えなくない?」
「それはそうだけど……」
なにやら赤黒のツートンカラーの子と野々野小頭はそんな話をしてた。透視してる野々野足軽の目に写って、その耳に届く声はどうやら何かの話をしてるらしい。
好きなアイドルとか?
「でもそんな雰囲気じゃないな」
そんな事を呟いて開いてパソコンの画面を覗き込むように視界を動かす。するとそこには何やら野々野足軽には見覚えのあるようなことばかりが並んでた。
「ん?」
ベッドに腰掛けてた野々野足軽は思わずベッドから立ち上がる。更に近づいてみてみる。別にそれはやる必要なんてないんだが、野々野足軽の体も前に行ってしまう。目を閉じてるのに、前のめりになってるから、なんか変な光景だ。でもそんなの野々野足軽は気づいてない。
「これって、俺のやった……」
(言ったでしょう? 彼女は貴方に興味がある――と)
「そういうことかよ」
ツートンカラーの彼女は確かに野々野足軽に興味がある。けどその彼女自体が追ってる存在が野々野足軽だとは思ってないし、気づいてない。
思わず野々野足軽は頭を抱えた。色々と気をつけてはいたはずだが、何やら写真とか、それに話を聞いてると、どうやら変な奴らがこの街にはやってきてるらしい。
こうやって誰かが自分の事を追う……そんな経験は初めての野々野足軽である。なにせ今までは野々野足軽は存在感って意味では普通。それかない方だった。あまりにも平凡で、だからこそいてもいなくても気づかれない――なんてことが多々あった。
「沢山の人が俺を追ってる……」
(恐ろしくなりましたか?)
そんな事をアースがいってくる。けど野々野足軽は透視を解除して、目を開いた。そしてアースを見てこういってやった。
「まさか。むしろせっかくだし、驚かせてやろう。どれだけ近づいたと思ってもそれは実際そうじゃないみたいな? そんな感じに操るのも面白そうじゃん」
バレないようにはする。それは野々野足軽だとは――ということだ。野々野足軽の考えはちょっと最初とは変わってた。自分自身とそして周囲大切な人達。そういう人達にあくまで危険が及ばない程度になら、力を示しても良いのかもしれないってね。そういう野々野足軽は新たなおもちゃを見つけた子供のように笑ってた。