uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットのなかだった(ただし出ることはできません)運命という世界線を壊せ 955

「くっ」
 
 弦を思いっきりひく。巨大な弓は自身の身長ほどもあり、弦だって特殊なそれは生半な力では一切引くことを許さない……それほどの物だった。
 自身の体を強化して、全ての力を合わせてやっと引ける……それだけのおかしい弓がこれだ。だからこそ、その弓から矢を一度放つたびに、弓隊の人たちの手からは血が滴ってた。そしてある人は――
 
「ぐああああ!?」
 
 ――という声を上げた。一体何が? と周囲の人は思う。その人は肩関節の部分からブシャーと血を噴き出してた。どうやら弓を放った反動がこの世界の強靭な人の筋肉を裂けさせたらしい。それだけ無理をしてでも、彼らは弓をいってる。
 
「もう……これ以上は……」
「大丈夫ですか! 早くこちらに!」
 
 ネナンちゃんがやってくる……と思ったが逆だ。なにせネナンちゃんが一人一人を回るのは効率がよくない。だから一気にまとめて一気に直して、また矢を敵に向かって撃ってもらう……という事をやってる。それに……だ。それにネナンちゃんには他の役目もある。それは勿論だけど普通に進撃してきてる砂獣を足止めすることだ。ネナンちゃんが足止めして、アイの砲撃でとどめを刺す。そういうルーティンだ。
 だからこそ、ネナンちゃんへの負担は実際相当な物。けどそれでも、今までネナンちゃんは自身からあふれ出る力をアクセサリーへとしてきた。だからこそ、そのストックは膨大にある。
 なくなったら、新たなアクセサリーをつけるってこともやってる。それを行うために、ネナンちゃんの周囲には数十人の侍女がいる。鼻から下を布で隠した、薄透明な布をまとってる女の方々だ。戦場ではむさくるしくなりがちだが、ネナンちゃんの周りだけはそのせいで華やかになってる。
 
 けど勿論だけど、今は戦闘中だから、その子たちに触れるとかちょっかいかけるとかそんなのはご法度だ。もちろんやるやつはいないけど。弓隊の人たちを運んでくるのも、本隊のむさくるしい男である。
 そして片手間で回復したら再び元の位置におんぶされていく。そして再び体が壊れたらネナンちゃんに直される。体が壊れることが前提の武器。それを使ってる彼らの体は確かに元には戻ってるだろう。けどその精神は疲弊していってるかもしれない。
 確かに敵と弓隊の人たちは対面はしないからある意味で安全な場所にいる。けど、他の面々と同じように過酷な状況には変わりなかった。どこにいてもここは戦場なんだ。