「ありがとう。今日はすごく楽しかった」
「うん、俺も充実してた」
日も沈んで、そしてお腹も膨れた二人は駅前でそんな会話をしてた。今日はもう終わり……そんな雰囲気だ。本当はこれからどちらかの家へといってしっぽり……とかいう思いがないわけでもないが、この日はお互いに家には呼べない事情があった。
それならば外でしっぽり出来る場所……それこそホテルへ……とかいう選択肢もあるかもしれない。でも彼らは学生である。高校生である彼らにはその選択肢はなかった。なにせ二人は互いに初めての彼氏彼女でプラトニックな関係だったのだ。
もちろん色々と知識はある。なにせこの現代、何だってネットにはあふれてる。でもだからって、二人ともいきなり「ホテルにでも」とか言えるようなタイプではない。
「えっとそれじゃあ……」
「送らないで大丈夫?」
「ええ、迎えが来てるんで」
なにせ痴漢物は電車が多い。平賀式部は絶対に痴漢から狙われる容姿してる。だから心配だったけど、家の車なら安心だろう。車にのってまで手を振ってくる平賀式部はかわいかった。野々野足軽も見えなくなるまで手を振るった。
「さて、返るか」
車が見えなくなったら野々野足軽も駅の内部に向かった。するとその時、視界の端になにやら目立つ存在がちらっと映った。別に力とか使って監視してた訳じゃないし、視界が特別広いみたいな特殊能力があるわけでもない。
でも見えてしまったのは、相手がとても目立ったからだ。それは勿論、仮面の男。まさかこんな偶然があるなんて……
「あれ?」
そうつぶやく野々野足軽。何が「あれ?」だったのかというと、それは仮面の男が連れてる女性である。それは昼とかに見た女性じゃない。あの時のやばい女性じゃない、別の女性を仮面の男はつれていた。
「なんであの仮面で女を侍らせられるんだ?」
思わずそんな風に呟いてしまう野々野足軽。やはり自信か? 自信が大事なのか? と思ってしまう。
「げっ……」