それからは彼の日常にその彼女を追いかけるというか、ちょっかいを掛ける毎日が始まった。なにせ……だ。なにせこれまでその権力やお金でなんでも出来てきた彼である。
否定されることなんてなかった。大人たちは彼に構う程に暇でもなかったのだ。けどそんなところに現れた力強い女性。これまで彼にとって女性は自身の言うことを聞く存在だった。なにせ彼には権力も金もあった。
だからそれを求めるために、女たちは彼に媚を売ってきたのだ。それが当然でそれは当たり前。それをやるのが女の生きる術だから、生きるための支援をしてる……そのくらいの認識だった。なのに……その女は違った。
「汚いやつだな。お前は本当に女か?」
そんな事を言って絡んで行ったこともある。なにせ仕事のあとの彼女は砂と汗にまみれてた。街から出ることがない彼とかからはそれはとても汚いものだった。けど彼女はそんな彼の言葉には反応しなかった。
そうなると余計になにか反応を引き出そうとするのがいじめっこというものだ。相手が反応するからこそ、いじめは楽しいんだろう。毎日毎日、汚いといいつつも彼は彼女は絡んでた。
そんな時、彼は父親からこんな事をいわれた。
「お前もいい歳だ。そろそろ仕事についた方がいいだろう。新設の部隊が作られる。誰もが歓迎だ。そしてそれはこの世界の為の戦いだ。
とても名誉なことだよ。そう思うだう?」
それにどうやって彼が反対できようか。そういうことで、放蕩息子は軍属へとはいる事になった。そうなったら勿論だけど訓練である。
まずは体力づくりということで毎日毎日走ることになった。朝から晩まで……砂まみれになるまで走る。それの繰り返し。街の外を走る時、運が悪かったら砂獣に出くわす。けど散発的な砂獣なんてこのときには敵ではなかった。
随伴してる軍の人が一撃で仕留めてる。それを新人達は「すげー」とか言ってみてるだけ。でもそんなときでも彼は思ってた。
(あんなの武器がよくなっただけじゃん。こんなの何の意味もない)
ってね。なにせ彼はそもそもが裕福だったからそういう情報だって入ってくる環境にあったのだ。武器が変わって装備が変わって、戦力は大きく増強されたときいてた。
だからこそこんな身体を鍛えるなんて……と彼はおもってた。そしてつらい訓練の日々、ようやく与えられた武器。それは新型で新品だ。
自身で見極めて、気に入ったものをとる。彼は剣をとった。中心に行くに連れて細くなって先端でまた太くなってた。そして彼はその剣を使っての訓練で負けなしだった。
どうやら戦闘センスってやつがあったらしい。自信がついて来た時、町中で偶然にも彼女にあった。俺はもういままでとは違う……そう思って彼は彼女に声をかけた。