その日は夢を見た。天国に居るお父さんとお母さんの夢だ。不幸があった直後は、私もそこに行きたいって……そう思ってた。けど、今は皆が色々とよくしてくれてる。
誰もが気を遣ってくれるし、寧ろ前よりも良い暮らしが出来てる。でもだからってお父さんとお母さんの居なくなった穴が埋まったかと言えば、そうじゃない。だからこそ、こうやって二人の夢を見るんだと思う。
私は夢の中でお花畑のなかにいる。お花畑自体何それってかんじだけどね。一応今お世話になってる宮殿には花壇ってやつがある。お花が咲いてる区画だ。それを見て感動したけど、お花畑というのはそう、そのときに聞いたんだ。
私に教育とかしてくれる先生の一人が中央にはお花畑があるんだって……だからこんな夢を見てるんだと思う。私は両隣をお父さんとお母さんに挟まれて、手を繋いでお花畑を歩いてる。
それは……とてもとても幸せな夢。でもそんな幸せは突然終わった。楽しくお話ししてた。私は今の生活をお父さんとお母さんにずっと聞かせてた。
二人は楽しそうにニコニコしながら、そんな私の話を聞いてくれてた。
「あのねあのね、お菓子ってすっごく甘いんだよ! サクってしてて、ホロって崩れて、ジュワーって甘い~! 幸せ~って思えるんだよ!」
そんな風に興奮気味に言ってた。
「でもお勉強は大変かも……だって皆厳しいんだもん。けど……期待? とかも感じるから頑張る! それにね、ほらほら、私のお洋服、お姫様みたいじゃない?」
私ははしゃいでる。だって二人に心配なんて掛けたくない。二人はもう居ないけど、私はきっと、二人の側に行くよりも、頑張って生きた方が良いって今は思うから……だから二人に寂しい姿なんて見せないのだ。
実際こうやって二人が出てくるって事は寂しいって思ってるんだと思う。それは認めるよ。一人になったとき、今まででは考えられないようなふかふかのベッドに入ってるとき……二人のことを思い出して泣いてしまう。
でも今はそのくらいだ。日中はそんなこと無い。でも忘れたいわけでもない。だからこうやって二人と居れる事は嬉しい。だから今はちゃんと生きてるって前向きだって姿を伝えたい。
そんな風に思ってると、二人が立ち止まった。
「お父さん? お母さん?」
どうしたのかと思って、二人を見ると二人が無表情になってた。その瞬間、ゾクッと背筋に悪寒が走った。なにか今まで楽しかった空気が霧散して、急に二人が恐ろしい何か……のように思える。
「お父さん……お母さん……」
私は再び笑顔が欲しくて、二人の手を引っ張る。こっちに向けて笑って欲しい。けど二人は微動だにしない。まるでお花畑に刺さったかのようだ。
そのうちお花畑が……青空が……どんどんと様変わりしていく。
「お父さん! お母さん!!」
私は涙ながらにそういう。けど目を開けた次の瞬間、お父さんとお母さんはその姿が様変わりしてた。角が生えた黒い肌の化け物になってた。砂獣でもない……一体……これはなに? 誰? そして気づく……あれ? これって私も……同じ……
その時、白い姿がやってきた。それを私は知ってる。それはジゼロニャンだ。うん、なかなか言いにくいけど、頼りになる大きな人。でも今は怖い。だってお父さんとお母さんを……そして……振り返って私にその拳についた大きなとんがりを向けてきたから。