とりあえず、どうやってあの橋を抜けるか……が目下の課題だ。ここをバレずに行くってなかなかに厳しい。それに、イシュリ君が目立つ。実際、まだイシュリ君のことがどれだけの人たちに広がってるのか……私はわかってない。だから聞こう。
『その子のこと、彼らは知ってるんですか?』
「いや、奴らはしらないだろう。この子のしでかしたことを知ってるのはそれこそ宮殿に務める一部の者達だけだ。つまりはそれだけのことをしたということだがな」
おじさんはそう言って少しだけイシュリくんに視線を向ける。それはつまりは、たとえこの人がイシュリ君がやったことが自分の意志ではなくて、このサソリのせいだと言ったとしても、きっと許されることはないだろう。最悪のタイミングで最悪なことをしたとして、きっと命を取られる。既にその運命しかこの子にはないと言うことか……全ては教会の思惑なのにね。
『そうですか……まあでも今は彼らがイシュリ君のことを知らないのなら都合がいいです。少しの間、こちらに彼を預けてください』
「それは……」
『今更、私がその子になにかするとでも?』
「それは思ってないが……」
『責任を感じてるのなら、助けられたあとにでもいっぱい感じてください』
私がそう言うと、彼は「それもそうだな」と言ってイシュリ君をこっちに渡してきた。よしよし、私はドローンでイシュリ君を受け取って、彼に対して光学迷彩をかける。まあけど、これならおじさんにもかけて、二人て透明になって……と思うだろう。
「それを私にもかければいいのではないか? 近くには居るんだろう?」
キョロキョロとしながらおじさんがそんなふうに言う。まあそう思うのも無理はない。けどさ……透明には透明なりの不便さってやつがある。もしもそこに扉とかあったらさ、独りでに開いたら不自然じゃん。
やっぱりちゃんとした立場の協力者がいるのなら、その人について行くことで、楽にそこを突破できるっていうね……
『――ということで、ふたりとも透明になると面倒なこともあります。あなたは疑われてはないのですから、普通に通れますよね? それならそのままのほうが都合がいいです。私はこの子を連れて後ろにいますから普通に橋を通ってください』
「そういうことならわかった」
理解してくれて助かる。彼はただ堂々としてくれてたらそれでいい。というわけで早速の作戦を実行することにした。