やっぱりだけど、教会は『波』を起こしたらしい。サーザインシャインインラを襲わせたのはやっぱり教会ということで確定していいだろう。
奴らは意図的に『波』を起こす手段を持ってる。迫りくる砂獣の大群。それは地平線を黒く埋め尽くすほどだ。その映像も実は町中に中継されてる。なにせ、これは世界の運命を懸ける戦いである。
この世界に住まう全ての人に関係がある戦いだ。だから知っておくことは大切だろうってことで、この中継はしてる。一応街の外には軍が展開してる。そこにはもちろんこれまで軍の兵士として訓練を受けてきた奴ら、それに賞金稼ぎの連中、さららには有志達が集った人々が加わって今までにないくらいの規模になってる。そして彼らにはこちらが用意した武器を装備させてる。これによって一人が担当できる砂獣が大幅に増えた。なにせ一刀のもとにアリ型の砂獣は倒すことができる。今までは一匹の砂獣に3人から5人くらいは必要だった。普通のアリ型の砂獣でそれである。
それよりも強力な砂獣にはそれこそ二桁の人数を当てるのは当然だった。けど、武器の質の向上、さらには新たに『血浄』よりも強力な身体強化方法の広まりによって、一人十体くらいは受け持つことができるくらいにはなってるだろう。
けどだからって、それだけで勝てるか……というとそうじゃない。寧ろ足りないくらいだ。でも敵は迫りつつある。けどまだこっちは動かない。なるべく街よりも離れた所で戦うのがいいだろうが、まだ……まだ動かずに砂獣が砂を覆いつくすようにうごめいてるのがみえる。
それを見て誰もが緊張してるだろう。けど波にはいくらでも砂獣は湧いてくる。だからただ正面からぶつかっても意味なんてない。とくに目の前の砂獣にだけ対処するのはナンセンスだ。でも当然だけどだからって砂獣を放置して街を襲われたら元も子もない。なにせ街には非戦闘員がたくさんいる。
それらを守るのも彼らの仕事。でも命を無駄にもできないから、まずはネナンちゃんが動くのだ。
「行きます!」
ネナンちゃんはその豪奢な服のまま膝をついて、祈ってた腕を地面につける。光を宿したその手から砂へと光が伝わって、その光は黒く覆いつくされた砂獣の足元までも進んだ。そして次の瞬間、砂獣の足元から巨大な植物が生え始める。それらに波の先行部隊が飲み込まれていく。
それを見てた人々が歓声を上げる。これが開幕の合図だっだ。