一通り私はメタリファーと邂逅した記憶を中心に彼の記憶を見た。それによって分かったのは実際彼の記憶の中ではメタリファーの思惑? 願い? はよくわからないということだ。そもそもが彼にメタリファーと通じ合う気がない……というのもあるし、メタリファーも意思を伝えるような……そんな存在じゃない……というのもある。
ただ時空間の何らかの干渉やら変化……それがある程度許容量を超えるとメタリファーはそれを修正する為に現れるような……そんな存在みたいだ。
だから彼が最初にメタリファーに出会ったのも、無茶な世界間航行を実行しようとしてたから……みたいだ。記憶にあった記録によると、彼は安全とは程遠いニュートラルチャンバーをしようとしてたらしい。ニュートラルチャンバーはどうやら彼の世界が考案して確立された世界間航行技術らしい。
つまりはG-01の世界間の移動もそのニュートラルチャンバーを使ってる……と思える。でも……記憶で見たニュートラルチャンバーとG-01がやってる世界間の移動はなんか違ってる気もする。そもそもが自発的に世界観を移動できるから確立されてるわけで……G-01の世界間航行は自発的ではない。必ずその世界のサンクチュアリを必要としてる。
それは明確な違いとしてある。でもそこは今はそこまで重要じゃない。彼がしようとした無茶が、メタリファーを呼び出して、そしてそれが彼とメタリファーの邂逅になったということだ。
本当ならそこで彼の世界間航行は失敗するはずだった。失敗といっても止められる――くらいだったと思う。メタリファーは無理やり呼ばれたりしない限りは基本的に無害らしい。そもそも概念だから感情というものは基本的にはないんだろう。
でも無理やり呼ばれたミレナパウスさんの世界では流石にムシャクシャしてしまったんだろう。だから冷静に対応したらなにか通じ合うことができなくもないのかも? 実際、そのときに彼はメタリファーと意思を通じ合わせたみたいだ。けど契約……みたいなことはしてないと思う。
きっと天才である彼はメタリファーが現れたときに色々と考えたんだろう。絶望とかの中、自身の世界からも追放されたとき、現れた超常の存在。それに何かを彼は見出した。それは「希望」とか「可能性」とかと言っても良いものかもしれない。
そもそもどうやら世界を追放された段階で彼の研究は行き詰まってたようだしね。世界間航行の無茶も自暴自棄になってた……というのも大きいが、同時に全く知らない世界へと……遠くの世界へと行くことで、研究のきっかけを得られることを少しでも可能性として求めてたんだろう。
そこに現れたウルトラCといえるメタリファー。でも相手は謎の存在でコミュニケーションの確立なんてされてない。神と違って話は通じない。けど……彼は喋った。ただ圧倒的に、彼はメタリファーにプレゼンをやったのだ。
それが効いたのかどうかはよくわからない。でも、メタリファーはこの船とともに彼をこの空間へと連れてきたんだ。