二人はしばらくの間額を合わせてた。その間ずっと、若い神父はヌメリアさんの手を撫で回してて、その鼻息は確実にヌメリアさんに届いてただろう。それでも一切反応を示さなかったヌメリアさんは凄い。さすがこれまで数多の男を手玉に取ってきただけのことは有る。私なら「いやぁぁぁ!」とかいって突き飛ばしてるね。
それくらいしてしまうくらいにはあの若い神父はキモい。いや顔はそこまで悪くなんてないよ。ちょっと頼りなさそうだけど、そこがいい……とか母性本能をくすぐるとか言って気に入る女性はいるだろう。まあこんな世界には珍しい線の細さであるけどね。
まさにボンボンな感じが出てる。それでもそこまでクズになってないのは評価できる……が、その分どうやら変態になってるようだ。クズか変態か……なかなかに優劣って付けれないね。そして一通りにヌメリアさんを堪能したんだろう。満足したのか、若い神父は立ち上がった。
「さあ、これで貴方にも信仰心が芽生えたでしょう。その心が教会に届いてくれます」
「……ありがとうございます」
微妙な魔があったヌメリアさん。今更彼女に信仰心が芽生えることなんて無いだろうけど、ここで否定してもう一度さっきのをするのは嫌だったんだろう。一応肯定してた。
「私の信仰心確認してくれましたか? でもこのままじゃ……すぐに信仰心がどこかに言ってしまいそうです……」
「そんなことはありません。毎日祈れば、信仰心が蓄積されていきますよ。そして祈るのが日常になるのです」
信仰心なんかではいきていけないだろうって私は思ったりする。毎日祈ってたら腹がふくれるのかってね。信仰心を可視化して教会が何かを支給してくれるんなら、たしかに信者になる価値とかあるかもだけど、そういう制度は聴いたことない。
「でも……サーザインシャインインラにはこのままでは明日は来ません。私はどうやったら教会への信仰心を維持できるのでしょうか? 心強い支えがあれば、違うのですが……」
そう言ってヌメリアさんは神父に寄り添う。はかなげてか弱い女性……そんな女性を彼女は演じてる。そして明日もないこの街で信仰心を保つためにはその切り札を観てみたい……的な事を暗に言ってる。さすがヌメリアさん。うまいね。こうやって自身が信仰心を目覚めさせた信者から信仰心がなくなるのはきっとイヤだろう。
だからさっきの気持ち悪いお祈りにも彼女はつきあったんだろう。こうやって貴方自身のおかけで信仰心が目覚めました……けど、そのためには――って感じで攻めてるんだ。こうなると通常よりもどうにかしないと……という気持ちが高まると思う。
そして実際、若い神父はこういった。
「そうですね。今の貴女なら、きっと認められるでしょう。常に教会への感謝を忘れないと誓ってください。それならば我らの切り札の場所に案内しましょう」
「誓います」
そう言って手を組んで祈りをするヌメリアさん。その言葉に……行動に一切の迷いなんてなかった。でもそこに信仰心はもちろんない。それを言うだけで信じてくれるなら、なんと安いことか……そんな事を思ってきっとやってるに違いない。
その証拠になんか「素晴らしい!」といって抱きしめてきた若い神父の顔が横にあるなか、彼女は舌を出してた。