休むことができない休憩を終えて、野乃野足軽と山田奏は駅のビルにほど近いでっかい電気屋へと来てた。結局のところ、あのカフェで得したのは野乃野足軽の中にいるアースだけである。
野乃野足軽は電気屋へと来たら、まずはゲームのコーナーへと真っ先に向かう。いつもなら……だが今は付き添いである。自分のやりたい事はぐっと我慢してる。それに別にゲームコーナーに行ったとしても、ゲームを買うわけではない。なにせ今やほとんどのゲームをパッケージで買うことなんてない。
全てはダウンロード版だ。野乃野足軽はゲームもそうだが、書籍とかも全部ダウンロード派だった。なので一応野乃野足軽の部屋には本棚とかあるが、そこには本は殆ど入ってなかったりする。
なにせ小さな板一枚に数百……いや数千だって書籍が入るのである。それなのに本を買って持っておく……という意味を野乃野足軽は見いだせない。でも別に本が嫌いってわけでもなかった。ゲームもパッケージが嫌いなわけでもない。
限定のパッケージ版とかはちょっと欲しい……とか思ったりもする野乃野足軽だ。けどそういうのはだいたいデカくて高いのだ。だから高校生の懐事情ではとても買えない。
なのでこういう所に来た時に、展示されてるのを見たりするのが好きなだけだ。
「ちょっと店員さんに話してくるよ」
「どうぞどうぞ」
山田奏はそういってカウンターの店員さんに話しかけにいった。その際、カウンター席内の男性店員と女性店員を見比べて、女性店員の方にいってた。
「あれってやっぱり男だから……だとおもうか? それとも、あの人、自分の顔の良さを利用しようとしてる?」
(別に打算でもいいのでは? その顔を良さを使う気なら、ちょっと観察して見ましょう。面白そうですよ。ある意味で力でそれを妨害して見たらどうでしょう? もっと面白くなるかもしれません)
(それは……)
ちょっとだけニヤつく野乃野足軽。実際、山田奏が話しかけた携帯ショップの店員さん……なのか、それともこの電気屋さんの店員さんなのかどっちかわかんないが、その人は突然のイケメンの登場に初手から頬を染めていた。
もちろんだが、野乃野足軽だってスマホを買ったことくらいはある。けどその時の女性店員さんはとてもテキパキと……言う成れば無機質的に仕事をこなしていた気がする。
少なくとも野乃野足軽は呆けてる姿は見たことなかった。
「あの、大丈夫ですか? 顔が赤いようですけど?」
「はっ! いえいえ、なんでもありません。うっ、うーんコホコホ、御用は何でしょうか?」
なんか女性店員さんは自分が持てる最大限の笑顔とそして声を作って山田奏を迎えてる。これがイケメンに対する対応ってやつなんだろう。もちろん野乃野足軽はあんな風な女性店員の接客、されたことなんて無い。