ドドドドド――
そんな風な水の落ちる音が響いてた。周囲を見回して、岩壁の亀裂から幾代は顔を出した。そして慎重に足音を立てないように、幾代は滝壺まで近づいた。そして少年が持ってた水筒に滝の水をいれる。不安げな顔が、落ちる水の衝撃でわずかに揺れてる水面に映る。
満月の月の光……野生動物の声……ガサガザと草むらがする。それだけで幾代の体はビクッとする。でも何かが出てくる事はない。水筒が満たされると、それを大事そうに抱えて彼女は再び周囲を警戒して穴へと向かった。そしてその狭い隙間に体を滑り込ませる。大人は通れないような……そんな穴だ。小学生だから通れる穴。その奥に少年が壁に背を預けて足を投げ出してる。
「大丈夫、周囲には誰もいないみたい」
「そっか……良かった。早く……ここから離れない……くっ」
「大丈夫?」
少年は投げ出してた足を引き戻して地面を踏みしめようとした少年。でも……少年は立つことが出来なかった。途中で体のバランスが崩れてしまう。そこに急いで幾代が向かってなんとか少年を支えた。
「すまん……こんなときに」
「仕方ないです。それにここはそうそうバレないですよ」
少年をさっきまでの態勢に戻した幾代。そして水筒を開けてその中の水を少年に飲ませる。
「はい、あーん」
「いや、怪我したのは足だし。自分で飲めるから」
そういって少年は幾代から水筒を奪うように受け取った。流石に水を飲ませてもらう……なんてことは恥ずかしくて出来なかったみたいだ。自分で水を飲みつつ、足をみる。足首のところが赤く腫れてる。きっと焦ってたんだろう。それも仕方ないことだ。でもそれでも……
「くそっ」
そんな風に呟いてしまう。自分が足を引っ張ってどうするんだって。そんな風に少年は思ってる。山は少年にとって庭みたいなものだった。なにせ四方八方を山に囲まれてる場所である。野山を駆け回って遊ぶのが物心ついた時からの習慣みたいなものだ。それなのにこんな肝心なときにミスった。木の根に足を取られて、転んでしまった。バレないように懐中電灯をつけずに月明かりだけで進んでたのも悪かったんだろう。
「おーい」「おーい」
そんな声が洞窟の外から聞こえた。その声にビクッと一瞬なって息を潜める2人。複数の足音が聞こえる。心臓の音が飛び出るほどに聞こえてた。でも……しばらくするとその足音は遠ざかる。
どうやら少年たちが見つかることはなかったみたいだ。2人は揃って息を吐いた。