「信じられぬのもわかります。ですが、これが本当の私です」
「まさか……そんな筈は……」
プライムはしっかりと真実を真摯に言ってる。でもまあ信じられないその気持ちも当然わかる。だって自分だって、いきなりそんなことを言われたって信じられないだろう。なまじ魔法なんてものがある世界だ。
(ああ、それにその魔法の知識でも変わってくるかもしれない)
そう思った。俺は魔法が万能ではないとしってる。いや、力をかなり上げた今の俺なら、かなり万能感あるんだが……勇者の時でも俺の魔法は光によってて強力ではあったが、万能ではなかった。魔法とはそういうものだと思ってた。
でも今まさに、魔法という力を教えられてる者ならどう思うだろうか? 何もないところから火を出し、光を放ち雷をもって敵を屠ることが出来る。
体を強化して千里を駆けり、大岩さえも投げ飛ばすそんな力を与える魔法が、果たして万能ではないと手にした奴は思うだろうか? この世界の魔法がどれだけ進んでるかは正直はまだわからない。なにせ魔法を協会が牛耳ってるからだ。
でもだからこそ、考えられることはある。それは協会が都合のいいように魔法という力を伝えることが出来る……ということだ。そして奴らは当然、自分達だけが行使できるその力を神聖なものだとしてる筈だ。大衆に広める気がないのだからその筈だろう。
となるとだ……神聖な自分達だけの力は偉大で万能だと教えてそうだ。だからこそ、アヴァーチェは魔法でなんでもできると思っててもおかしくない。
そうなると、絶対にプライムの事を信じないような気がする。なんでもできると思われてるのなら、何を話したところでってなるだろう。二人だけの秘密であってもそれこそ魔法が『万能』ならすべての事が出来るのだから。
やっぱりこうなったら、無理矢理でも眠らせて連れていくか? それも一つの手だ。荒っぽくなるが、しばらくこの協会事態に上から結界でも張って、一日程度誰も出れないようにすれば時間は稼げる。
まあ荒っぽいことは最終手段だが……プライムはどうする気だ? 俺的には既に話し合いではどうにもできない感じがしてるが?
「兄上、私は色々と兄上の事をしってますよ」
「そんなもの……なんの証拠にもならない」
「あれはそう……私が生まれた直後の事です」
マジかよ。アヴァーチェの言葉を無視してプライムは話を進めてる。しかも自分が赤子の時の事をまさについさっきあったかのように語ってるよ。寧ろ俺にはプライムが不気味に映るくらいだ。
でもそれはどうやら効いたらしい。確かに魔法はアヴァーチェにとって万能かもしれない。でも、本人を操るにしても、その記憶をみるにしても、残ってなければならないのは確か。
赤子で生まれた直後まで果たして魔法で見れるだろうか? それに操ったとしても、普通はそこまで術者本人も想定はきっとしない。今ここで、赤子の時の初対面の反応をプライムが語れることはおかしい……と思いつつも、十歳くらい違うアヴァーチェにはその時の記憶があって、そしてたぶん一致してる。反応をみればわかる。
だからこそアヴァーチェは傾きだした。
「まさか……本当に、本当にプライムなのか? 本人?」
「すみません兄上。今までだましていて。私はずっとこうなのですよ」
大人びた三歳児はそういって笑ってた。