「今のは一体?」
「ふん、あれはアズバインバカラの刺客だろう。ラパンめ……我らの恩を仇にしおって……ぐぬううう……」
そういって腕を抑え出す心臓を使って腕を肥大化させた教会のやつ。ふむ……まああんな変な感じになってるんだからリスクはあるよね。
「だ、大丈夫ですか?」
「ふふ……今、私は楽園と繋がってるぞ。聞こえてるよ。楽園の歌が」
「それは……すばらしい!」
「ああ、肉体は悲鳴をあげてるが、心はとても満たされている。やはり我々には肉体などというものは邪魔でしかないようだ」
「そうですね。この肉体に一体いくら苦い思いしてきたか」
なんかそんなことを言ってる。こいつら、肉体を捨てたいの? まあ確かに肉体はそこそこ不便かもしれないが……でも肉体がなくてどうやって存在していくのか……そこら辺は気になる。まあこいつらのいう楽園では肉体がいらないのかもしれない。
(でもだからって気が早すぎでは?)
私は会話を聞きながらそう思ったよ。その楽園? に辿り着いたならいいと思うけど、今肉体を捨てて大丈夫なのか? って思う。そんなことを思ってると、なんかもう一人も同じようにどっかに繋がってる心臓を取り出した。
(あれってそんな貴重なものでもない?)
そんなことを思った。
「狙いはわかってるな」
「はい。我らの肉体をあの巨人へと」
「うむ、我らの肉体を媒介にしてあの巨人に心の臓を作り出す。それによって我ら教会に宵への干渉を実現しようではないか」
「本当ならベイルベンの遺児を使うつもりだったが、巨人がいるのだ。あれを使わない手はない」
「運が我らに味方してるということでしょうね」
「はははは! 何をいうか。運ではない。天よ、味方してるのはな」
「さようですな」
そう言って二人は上機嫌に笑ってる。なるほどね。どうやら教会の狙いは鬼らしい。あの黄金の鬼。でも実際、こいつらに鬼をどうこうできるとは思えない。素直に最初の計画通りにベイルベンの遺児を使った方がいいと思う。
まあそんな忠告をする義理もないけどね。するともう一人もその心臓を自身の中に取り込んだ。どうやって? と思うかもしれないが、ただ押し付けると苦しみ出して、そしてずぶずぶと肉体の中に入っていった。それによってその人はなんか全身が大きくなって、ローブを……というかきてたものを弾け飛ばして、黒ずんだ体を曝け出す。
「あがあああああ!!」
なんか…… 大丈夫? と思ったよ。