「なんで……私は……」
そんな風に小さな声が聞こえたような気がした。
「え? なに?」
草陰草案は目の前の女の言葉を僅かながら聞こえたような気がした。パトカーのサイレンとか、悲鳴や怒号……あとはよくわからない声が鳴り響くなか、なぜか草陰草案にはその声がきこえた。
「ねえ! なんでこんな事をするの!?」
「どうした? 何を言ってる??」
「大丈夫ですか草案氏!」
「いきなりどうしたのだ?」
「え? 聞こえてないの?」
草陰草案は驚いてる。どうやらその女の声……それは草陰草案以外には聞こえてないらしい。もしかしたら力が関係してる? と草陰草案は思った。
「おい、あれってもしかしたら……」
「え? おいまずいぞ! カメラに映すな!!」
「ぐふふふ……おっほ!」
なにかに気づいたチャド氏と大川左之助。そしていきなり変な笑い声を出したミカン氏に草陰草案は「うわキモ」――と心の中て思った。だってその笑い声……そしてその表情がね……女子中学生が直視するには醜悪すぎた。
端的に言うといやらしかったのだ。ミカン氏はその鼻の下を伸ばして自身のスマホを取り出して写真を撮ってる。確かにあのコスプレはなかなかの完成度で、まるであの羽根なんて本物みたいだ。
それにあの体にぴっちりとくっついてる服? は恥ずかしくないのだろうか? と草陰草案は思う。草陰草案はまだ女子中学生である。これからに希望があるし、若さがあるから、肌は何もしなくてもピチピチだし、張りも透明感もある。それに草陰草案は太ってなんかないし、スタイルはいいほうだ。
けどだからって人前であれだけ肌を晒すことができるか? って言ったら否だ。流石にあんなピッチリ過ぎる服なんてきたくない。
「服? だよね?」
「気づきましたか草案氏。あれはどうやら、服ではなさそうですぞ。言うなればボディペイントのようなものでしょう」
「え? まって……それってつまりはあの人は……」
混乱する草陰草案。けどミカン氏は興奮したように鼻息荒くこういった。
「そう! つまりはあのお方は今スッポンポン――ということですぞ!!」
そんな興奮しまくってる彼に草陰草案は更に引いた。そして同時に、確かに裸でこんなところまで来てしまったら彼女くらい絶望してもおかしくない……とも思った。
(いや、普通は全裸で外になんか出ないけど。まさか彼女も?)
そんな疑問が新たに生まれる。チャド氏は彼女が元凶といった。そして草陰草案もそのおかしな力が彼女から立ち上ってるのを確認できる。だから彼女が元凶なのは間違いない。
でもだからって彼女までもおかしくなっていない……なんていえるだろうか? まずは確かめ方がいいのかもしれない……と草陰草案は思った。
まあけど、スッポンポンの彼女は草陰草案の言葉には何の反応もしてくれない。