「ええい!!」
そういってネナンちゃんが一生懸命動き回ってる。ここはアズバインバカラの宮殿の一角だ。広く取られた中庭で木偶人形が何体かあり、更に壁には丸い砂袋がつるされてる。それに兵士が先端をつぶした槍を投げている。そんな傍らで一人のひげが長い老人の指導の下、ネナンちゃんが汗水を垂らしてるのだ。
勇者ご一行が中央へと旅立ってすでに数日は立っただろうか? 多分もう中央についてるとは思う。勇者の奴がさっさと中継器を起動させれば連絡を取れるんだけど……それはどうやらまだだ。道中に戦闘がありすぎて力が枯渇してるのかもしれない。一応起動には勇者の力が必要だしね。
『この世界の敵に後れを取るとは思えませんが』
「そうだけど、守る奴らは多いしね。それに協会の力だって不明じゃん。かなり力を隠してると思うんだよね」
私は薄暗くひんやりとしたG-01の中でAI 相手に喋ってる。なにせ勇者も魔王もこの場にはもういないからね。AIくらいしか喋る相手がいないのだ。
なんかつらくなった時にネナンちゃんが私の脚元に来てうずくまって弱音を漏らしたりしてるけど、それに応える訳にもいかないからね。私はひそかにネナンちゃんに対して『頑張れ!』とエールを送るしかできない。
ネナンちゃんは特別な力を天から授かった巫女? とか御使い的な感じで宮殿で保護されてる。まあ実際、この世界の誰よその授かった力は大きいだろうからね。
保護しないわけにはいかない。色々と協会が言ってきてるみたいだけどね。孤児の保護は協会の役目とかなんとか……奴らもネナンちゃんがとんでもない力を内包したのは知ってるからね。
どうにかして正攻法で宮殿から連れだすことを狙ってる。実は勇者たちが旅立った後も何度か宵を理由して協会は刺客を送ってきてる。まあもちろんそれは私が潰してるから、成功はしてない。けどそれはポニ子を通じてちゃんとラバンさんたちに伝えてはいる。
たぶんちゃんと伝わってる筈だ。ポニ子はポニポニとしか喋れないけどね。まあ刺客の亡骸もそのままにしてるし、それを指さしてポニ子がポニポニしてたら、察しのいいラパンさんは気付いてくれる。
「もうあれ何個目だっけ?」
『十三個目ですね』
「ちょっとネナンちゃん世界に愛され過ぎじゃない?」
『ほかに変わりのような存在がいないのからでしょう。彼女は大きな世界の力の流れの栓の一部になってるみたいですね』
「栓?」
『力が湧きだす場所と取らえてもらって構いませんよ。世界にはいくつかそういう場所が有ったりします。そしてそういう場所からは特殊な生物が発生したりしますね』
「そんなのを一人の少女に設定しないでよ」
そんなのは場所とかが成るべきじゃないの? 一人の少女がそんな力が湧き出る場所認定されるってどうよ? てかネナンちゃんが無事なのって私が彼女が身に着けるアクセサリーを全部力を受け入れるタンクに変えてるおかげである。
ネナンちゃんは気付いてないが、毎日変わるそれは一日ごとに満杯になってるといっていい。最初はそれこそ三日後とかに満杯になるくらいだったが、今や一日で彼女の身に着けてるタンク代わりのアクセサリーは満杯だ。そしてすでに十三……だと? 私が作った……というかG-01の力で作り出したアクセサリーの容量はそれこそこの世界の人たちが一生かかっても満杯になんてできないくらいの容量があるはずだ。
それを一日って……最初は元からネナンちゃんに与えられた宝石を全部変えてどうにかなるでしょ……とか思ってたが、今や毎日ネナンちゃんの為にラパンさんがもってる無駄にしてたアクセサリーを引っ張り出してそれを私が毎夜作り変えて朝にネナンちゃんに着けさせるってことになってる。
ネナンちゃん……なんというやんちゃな子だよ。おかげでここから動けないよ! いや、一気に作り変えてればいいだけなんだけどね。