「やめろ! やめろおおおおお!!」
「なな、何?」
何か腕の中で行き成り苦しみだした黒い勇者。私は確かに腕で押さえつけてるし、力を流し込んでる。でもその対象は黒い勇者ではなくて、聖剣の方。だから黒い勇者には私は直接的にはG-01の手で押さえつけてる以外には何もしてないはず。
「ちょっと力を入れすぎてポキって行っちゃったかな?」
その不安がないわけではない。だって私と黒い勇者ではサイズ差がある。サイズは差はそのまま質量の違いであり、力の差もそれだけ大きくなるわけだ。勿論抵抗出来るだけの力が黒い勇者にはあるが、でも結局はこっちの方が力的には強いからね。
ポキッと行ったとしても不思議ではない。
『そうではないようですよ』
「ん? あっ、聖剣が……」
何か聖剣が光り出して凶悪になってた姿が元に戻っていく。どうやら私が流し込んだ力が上手く反応した? 冷静さを取り戻したのかもしれない。
「――ってちょ!?」
手の中から溢れる力が私の手を弾く。まさか……そんな……私は勇者の上位に当たる存在だ。その私を弾くとは……どんだけの力を溢れさせてるの?
「くおおおおおおお!? そんな力を溢れさせるなぁ!!」
「あれ?」
なんかめっちゃ黒い勇者が苦しんでる。てか振りほどこうとぶんぶんしてるけど、黒い勇者と聖剣は同化してる。手を放せば良い……なんてもんじゃないからどうしようもないみたい。
ぷぷ、なんかおかしな事になってるぞ。
『力の質が変わっています』
AIがそんなことを報告する。まあ報告されるまでもなくて、それはわかってるけどね。感じたらわかる。てか視覚的にもわかりやすい。さっきまでは黒い勇者に引っ張られる形で聖剣の力も黒くなってた。
でも今はどうか……ピンクである。何かピンク色の力が溢れてる。ピンクはアレだね。幸せの色……いや、恋の色と言っても良い。そんなキュンキュンとする気持ちが伝わってくるもん。
「私、凄い……ここまでやる気は無かったけど、結果オーライだね」
『何かした自覚があるんですか?』
「あるわよ! 私が押さえ込んで聖剣を正気に戻したんじゃない!!」
『正気……ですかこれ?』
「…………」
実はさっきから聖剣の声が私には……いやコックピット内で響いてる。それは――
『やりました! 私たち結婚しました!! この愛は永遠です!!』
――と意味不明な言葉が響いてた。うん……これは……正気ではないかもしれない。