「何をそんなに怖がってるんです?」
「かわいいのにね」
野々野小頭と草陰草案はそんなふうにいって黒猫に向かって「ニャーニャー」といってみる。そんな女子中学生の可愛い光景を見てても、後ろのおっさんたちはほんわかすることはない。なぜなら、昨夜の出来事がどうしても頭を彼らはよぎってしまうからだ。
「あまり無闇に近寄るものでは……」
とか猩々坊主はいうが、女子中学生である二人は可愛い黒猫に夢中でそんな忠告は耳に入ってなかった。
「ニャーニャー」
「グルグル」
猫の鳴き声を真似してる二人。するとそっけない態度を取ってた黒猫がトコトコと二人の元に歩いてきた。そして草陰草案の伸ばしてた手をペロペロとなめた。
「ふふーん」
そんな感じで草陰草案は自分が選ばれた――という感じに野々野小頭にドヤ顔をする。そんな草陰草案を悔しそうに見る野々野小頭。けど近くまで来てくれたんだからと、彼女も猫を触ろうと手をのばす。すると……
「みゃー「「みゃー」」
野々野小頭の伸ばしてた手が止まる。いや、それは野々野小頭だけじゃない。その場にいた全員の時が止まった。それと思考も。なぜなら、重ね聞こえた鳴き声はその猫が発してる。
どういうことかというと、なんかその猫の首からもう一つの顔が生えてきた。そして一つは草陰草案に、そしてもう一つは伸ばしてきた野々野小頭に「みゃー」といってたんだ。
「「…………きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?????」」
「「「うああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」」」
そんな悲鳴を上げてその場の全員が来た道を必死に走り出す。もうそこに大人も子供もなかった。全員が必死に走って、階段を駆け下りて、そしてなんとかミカン氏をおいてきた場所まで戻ってきた。
「皆のもの~酷いですよ~一人にするなんて~え? ええ!?」
落とされてたが意識がどうやら戻ってたらしいミカン氏。でもそんな彼に誰も構うことはなかった。彼の横を速攻で通り過ぎて皆が出口を目指す。それに何かを察したミカン氏は「待ってくださいいいい!!」といって彼も走り出した。
そして全員が太陽のもとに出て安心した。どうやら日光には精神を安定させる作用があるようだ。光がどれだけ偉大なのか、全員が感じてた。
「何があったんですか?」
一番短い距離しか走ってないミカン氏はちょっとだけ息を上げてるが、その程度だ。けど他の人達は全員がゲホゲホとしてた。なので彼の言葉に返す余裕なんてなかった。けどそんな中、ゲホゲホ言いながらもり「ふへ……ふへへへへ」と変な笑いを発してる者がいる。それは誰か……それは草陰草案だった。