同じ場所から同じ腕が生えて来たメタリファー。これは下手にどこかを切ったらこうやって増えていく……ということなのだろか? そんな事を思っちゃうと下手に攻撃力が一番高い勇者はやりにくくなってしま……とか思ったけど、そんなことで勇者はひるまないらしい。今度はその聖剣を腹に突きたててた。
当然メタリファーはその傷も無効にしようと時空間の力を使う。でも今回もやっぱり無理だった。しかも今回は胸である。何かをはやす……なんてのは出来ない。きっと勇者もそれを狙ってたんだろう。
でも流石に一回刺すだけじゃメタリファーも倒れないらしい。その増えた腕を振るって勇者を引きはがす。けど勇者が引き離されても、まだジャル爺達がいる。彼らの攻撃も今やメタリファーへと通用する。流石に勇者のように一撃で大ダメージを与える……ということは出来ないが、それでもちゃんとダメージにはなってる。だって彼らの攻撃で出来たダメージもメタリファーは回復出来てない。
「いける!」
「いける……」
「いける!」
「ああ!」
皆がそう思ってた。確かな手ごたえ……それを感じてるんだ。今まではそれこそ全くと良い程通用してなかったからね。その手ごたえが自信と、そして勢いになってる。彼らの動き的にはなるべくメタリファーの意識を分散させてそのわずかな隙を勇者が突く……という感じだろう。
実際上手くいってると思う。彼らはその小ささを逆手にとって機動力を生かした戦い方をしてる。実際普通の実力しかないような人達なら、すぐに地上に落ちていってしまうだろう。
そのくらい実は髪の毛は動きは激しいし、一撃でも当たったらまずいのだ。けどそれらを上手く利用してメタリファーの周囲に張りつき、そして攻撃をし続けてる。
きっと彼らにはヒリヒリとした緊張感がまとわりついてるはずだ。まさに死と隣り合わせて……この戦場ではミレナパレスさんのおかげで死が遠ざかってるといっても、時空間の攻撃をくらって訪れる死にまで対応できるか? と言ったら……ね。そこは疑問である。そもそも時空間の力の影響を受けた傷口には回復魔法が届かない可能性がある。
それだけ時空間の力というのは特殊だ。引き抜かれた聖剣の傷口……その場所が光ってる。穴がふさがってないからだ。あれは弱点として残ってるという事なのか? そんな事を思ってると、メタリファーの奴がその片方の腕……二重になってる腕に力を集めてる。何をするつもりなのか……次の瞬間、メタリファーはその二重の腕を横に時間差で動かした。